ユニクロ 疲弊する職場 [拡大版] サービス残業が常態化、うつ病の罹患率も高い

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だが店長の役割を見ると、いわゆる「名ばかり管理職」である疑いが消せない。同社が示す店長の「月次・週次モデルスケジュール」によれば、店長が責任を負う「管理業務」は週60時間超が課されている。会社は、部下やスタッフ(準社員やパート、アルバイト)への権限委譲を進めれば十分こなせる水準だというが、そもそも小型店だと、「管理業務を行える部下がおらず、委譲しようにもできない」(Cさん)。

さらに店長の仕事のうち、モデルスケジュールの示す管理業務はほんの一部だ。Cさんは「管理業務と現場業務の比率は大体4対6で、現場業務のほうが大きい」と語る。

そのうえ店長の権限は決して大きくない。什器の設置や商品の陳列の方法などは色の並び順まですべて決まっており、店長の裁量権はせいぜい在庫の発注とスタッフの採用ぐらいだ。ただし募集時の時給額も本部が決めている。あとは本部の指示、直属の上司で複数店舗を統括するスーパーバイザー(SV)の指示、そしてマニュアルに従って働く。

新人店長の給与は18ランク中下から4番目

管理・現場業務にフル稼働する一方で、給料については「店長になっても年収400万円程度だった」(Cさん)。新人店長の給与グレードは、採用パンフレットにある18ランク中、下から4番目にすぎない。

同社のような多店舗展開する小売企業の店長が管理監督者だと認められるのは、法律的には簡単でない。店長が管理監督者に当たるのかに関して争われた 先行事例が、「日本マクドナルド事件」だ。同社でも店長はユニクロ同様にアルバイトの採用や勤務シフトの作成を行っていた。だが裁判所は、店長は営業時間 や商品の種類、価格などについては本社の方針に従っており、企業全体の経営方針にも関与していないとして、管理監督者とは認められないとした。

同事件で原告側代理人を務めた棗一郎弁護士は、ユニクロの店長に関しても、「プレーヤーとしての現場業務の比率も高く、同社内で比較して十分に高い 報酬を得ていたともいえない。管理監督者とは認められないケースだろう」と語る。大阪市立大学の西谷敏名誉教授(労働法)も、「仮に店長が管理業務だけに 従事していたとしても、管理監督者であることを否定される例は多い。ましてや現場業務の比重が大きいのだとしたら、行政解釈、判例、学説どれに照らして も、管理監督者としては認められない」と評する。

元店長のCさんは、「マクドナルド裁判で示された基準で管理監督者といえるのは、新人店長の2ランク上のSVからではないか」と言う。ちなみに日本マクドナルドはこの事件後、店長と、ユニクロのSVに当たる、店長の直属上司まで、管理監督者からは外している。

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