ヒラリーを大統領に導く「超重要人物」とは 米大統領選まで雇用統計が堅調な理由

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この指標をお祭りのように扱う相場とは別に、海外から雇用を通し米国の真の姿を想像したいなら、同時に発表される「世帯調査」(Household)に注目すべきだろう。こちらはサンプルが6万と少ないが、世帯側への調査であり、農業従事者や個人契約者も含まれる。前者がジョブ(仕事)の数であるの対し、後者は真の雇用の状況に近いといえるだろう。

さて、本題だが、今回のテーマは「重要な経済指標と政治(選挙)の関係」だ。その上で先日の8月5日は、世界で最も信頼され(トリプルA)、金融市場の“ベンチマーク”となっている米国債が、史上初めて格下げされた「記念日」であることに触れたい。

2011年8月5日はリーマンショックから3年、株価は持ち直したものの、欧州危機が起こり、米国では翌2012年の予算をめぐって議会が対立していた(いわゆる「財政の崖」問題)。そんな中、国債の利払いの不安から、大手格付け会社のS&P社が米国債の格下げを断行した。結果、株は暴落した。ところが、格下げになった米国債は、逆に買いなおされる展開になった。

ここで筆者が取り上げたいのは、この時のオバマ政権の対応だ。S&P社には怒りをあらわにし、強く抗議した。一方で格下げまではせず、警告だけに留めたムーディーズには何もなかった。

オバマ政権が行った格付け会社への「報復」

その後S&P社では大幅な人事刷新が行われた。これは明らかにオバマ政権からの圧力を受けた「懲罰人事」だった。そしてS&P社よりもっと悲劇的だったのが、中堅格付け会社のイーガン・ジョーンズ社だった。

同社はもともと規律重視の保守系色だったが、ブッシュ政権時、前述の大手2社の「自動車ビッグ3」の社債への格付けがまだトリプルAか、それに準ずるレベルだった頃、単独でフォード社の社債をジャンクレベルまで格下げした。

その後ビック3が行き詰まり、イーガン・ジョーンズ社の評価は一気に高まった。この時は先を見通す力をさることながら、前述の大手2社が格付けをする証券の発行会社から手数料を受け取るビジネスモデルだったのに対し(映画「マネーショート」)、同社は販売先の投資家から手数料をもらうビジネスモデルだったことが高く評価された。

ただ今思えば、その高評価が逆にあだとなったのだろうか。同社は近未来の財政規律の面で米国債に対する悲観的見通しを変えなかった。すると再選が迫ってきたオバマ政権は、同社の古いレポートの内容不備を理由に、国債やモーゲージ債など、株価に影響を与えそうな主要証券に対する同社の格付け業務を停止した(2012年、SECによる2年間の業務停止命令)。

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