AV業界はなぜ今「健全化」に邁進しているのか 出演強要などに関する相談は増加傾向

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出演強要問題で特に問題視されているのが、女優とプロダクションの力関係だ。本来、個人事業主の女優とプロダクションは対等な関係。しかし、支援団体の報告では、女優の立場が低く、プロダクションに逆らえない状況が生まれている。

この点が問われたのが、6月に起きた大手AVプロダクション「マークスジャパン」の元社長ら3人が労働者派遣法違反の疑いで逮捕された事件だ。女優が、実質的な「労働者」とみなされれば、労働者派遣法や職業安定法に抵触する可能性がある。労働者を派遣するには厚生労働大臣の許可がいるし、そもそもAVへの出演は法律上、労働者の派遣が認められていない業務だと考えられるからだ。

プロダクションは業界にとってなくてはならない存在でもある。業界には、大手プロダクションから逮捕者が出たことで、「このままでは業界が潰される」という危機感が生まれたという。

業界内部でも「自浄」の動きが始まる

業界側にも言い分はある。近年は、自発的にAV女優になる女性が増えており、かつてに比べて問題は減っていると考えているからだ。強要問題で、業界に対する風当たりが強まると、ネット上には「業界全体が悪いわけではない」という関係者からの書き込みが相次いだ。

現在、業界内部では、自浄作用を示すため、問題が起きづらいシステム作りが始まっている。大手メーカーなどでつくる業界団体「知的財産振興協会(IPPA)」は、支援団体と話し合いの場を持ち、6月22日付で声明を発表。「プロダクションにも働きかけ業界全体の健全化に向け早急な改善を促していきたいと思っております」と表明した。

また、出演者側でも、AV出演者らによる団体「表現者ネットワーク(AVAN)」が7月に発足。元AV女優の川奈まり子さんが代表に就任した。

業界内部には、現在のシェアを守らないと、団体に加盟しない「インディーズ」や「同人」の増加を防げないという懸念もある。具体的には、無許可の撮影や無修正動画などだ。消費者がより過激なものを求める以上、多少の違法行為を伴っても、商品を提供しようとする業者が出てこないかが危惧されている。実はこの点では、支援団体も一致している。

ライトハウスの藤原志帆子代表は、「今は誰でもポルノを作れるし、日本人が見るポルノが海外から逆輸入されている。業界が浄化されたところで、海外サーバーから流されると太刀打ちできないという懸念があります」と語っている。

【弁護士ドットコム編集部より】 弁護士ドットコムニュースでは、AV出演強要問題について取材しています。出演強要、スカウトなどの実体験、業界内部の情報などを募集しています。こちらのフォームをご利用ください。

 

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