シェール革命の「都」に、群がる日本企業 製造業が息吹き返すヒューストンの今

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シェール(頁岩)の現物

米国で油ガス田の開発をする場合、地主から3年程度、土地を借りる。イーグルフォードでも特にオイルリッチの地域では、土地のリース権(採掘権)は1エーカー(4047平方メートル)当たり2万~2.5万ドルと全米最高水準にある。数年で10倍以上の高騰という。

さらに、開発業者は採掘収入の25%程度をロイヤルティとして地主に支払う。一定の収入が上がらないと失権するため、開発業者は時間との勝負で年間何十本も井戸を掘る。当たれば契約を維持・更新できる。

たとえば、日本の石油資源開発が2012年8月に5%の権益を取得したのは2.7万エーカーにも及ぶ大規模な土地のリース権だ。95%の権益を持つ米マラソンオイル社と共同運営契約を結んでいる。

石油資源開発の渡部克哉・ヒューストン事務所長(写真)によると、地主は40代の牧場経営者で、採掘の制限地内でキリンやシカを観賞用として飼っている。リース権売却収入だけで数百億円に及ぶうえ、現在生産している日量4000バレルの収入の4分の1、ざっと1000万円が毎日地主の懐に入る計算。計画どおり日量2万バレルへ増産すれば、ロイヤルティは5倍に膨らむ。

パイプライン網などの充実したインフラに加え、こうした「地主に莫大な富をもたらすインセンティブが、米国でシェール開発が急拡大した背景にある」と渡部氏は説明する。日本を含めた他の国では地上の土地は私有でも、地下資源は公有が多い。これに対し米国では、地下資源も地上の地主に所有権が帰属するため、民間のアニマルスピリットを存分に発揮しやすいのだ。

外資を利用しつつ主導権と技術は渡さない

チェサピークやデボン、XTOエナジー(エクソンモービルが3兆円強で買収)など、採掘権を取得する開発業者としては、いかに生産性の高い「スイートスポット」を発見するかが勝負。そのための高度な技術を提供するのがシュルンベルジェ、ハリバートン、ベーカーヒューズを御三家とする探鉱・掘削会社。「地下を牛耳る実行部隊」だ。彼らは米国で先行して培った技術を武器に、将来の世界的なシェール開発でも主導権を握ろうとしている。

「おいしいところは皆米国企業が囲い込んでいる」と日系企業幹部はこぼす。日本の商社や資源開発会社なども上流権益を取得しているが、依然として50%未満のマイナー出資。採掘権の過半を握る米国のオペレーターによっては、情報を出し渋るケースもあるという。オペレーターの座を狙い日本企業も技術習得に励むが、探査や採掘の技術者、さらには「ランドマン」と呼ばれる不動産のプロ、法務・会計専門家など、体制整備には相当な努力とコストを要する。

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