女子大生は、なぜ「売春」せざるをえないのか 「大学は最悪の"組織的詐欺"を行っている」

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中村:本来、職能教育は現実と向き合う作業だけど、具体性のないポエムでモチベーションを上げさせようってことばかり。それによって生まれているのは現実感のないポジティブな若者と、奨学金の残債だけ。言葉で操るだけでモチベーションが上がっちゃう若者が量産されているから、ブラック企業が流行したのも当然のことだよね。

鈴木:その層のキラキラポエム系の学生とブラック企業にありがちな自己啓発的な新人教育の親和性の高さは、僕もずっと感じてきたこと。やはりその界隈はかぶっているのでしょうか。

中村:若者に提言したがるのは、ベンチャー経営者とか、名誉欲にまみれた社会起業家とか、ブラックで一財産を築いた居酒屋の社長とか。そんな連中の職能教育は自分の利益になる方向に誘導する。今こそ「夢はない、明るい未来はない」と言い切る指導者が必要でしょう。

鈴木:政策提言の場にどんどんポエムやキラキラの親玉が入ってきて、お役所の役人さんは自分の目で現場を見ない人ばかり。加速度的に状況が悪くなっている。どうしても僕がいらだちを抑え切れないのは、学校の教員の問題です。たとえば、なぜ学校教員に奨学金問題の責任追及が行かないんですか。すごく密接に関与していますよね、学校教員と奨学金って。

中村:貧困家庭の子には、高校の先生が当たり前のように負債を背負って進学することをすすめている。子どもの将来のことなんて何も考えてない。ベルトコンベヤー式に業務をこなしているだけ。

学校の先生がどれだけ世間のことを知っているのか

鈴木大介(すずき だいすけ)/1973年千葉県生まれ。「犯罪する側の論理」「犯罪現場の貧困問題」をテーマに、裏社会や触法少年少女ら の生きる現場を中心とした取材活動 を続けるルポライター。近著に『脳が壊れた』(新潮新書・2016年6月17日刊行)、『最貧困女子』(幻冬舎)『老人喰い』(ちくま新書)など多数。現在、『モーニング&週刊Dモーニング』(講談社)で連載中の「ギャングース」で原作担当

鈴木:僕には彼らが進路決定やその後の人生に大きく関与する現場にいるべき人材とはとても思えません。進路指導をするなら、当然、そこに進路指導の専門家がいるべき。学校を出てから一度も社会に出ることなく学校の先生になった人が、どれだけ世の中のことを知っているのでしょうか。学校の進路指導は、ガイドラインに沿っているだけでしょう。進路指導は本来、極めて難しい仕事。今の世の中にどんな仕事があって、目の前の生徒に何が向いているのかを自分で調べないで、安易に用意されたキラキラ系のガイドラインに乗っかっているだけ。学校教員が本気で進路指導をしてきたら、「大学全入時代」なんて絶対にありえなかった。

中村:確かに、高校の先生は子どもを相手に同じ授業を繰り返す狭い世界ではあるよね。社会経験が少なくて、マニュアル対応だろうから、生徒への個別対応は能力的に難しいかも。続々と奨学金制度に生徒を流している高校が、恵まれている人が貧困層に対して間違った支援をする典型例かもしれないね。

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