「羽田新線」に財政投融資という仰天アイデア 安倍「経済対策」はリニアへのメリット乏しい

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羽田アクセス線が整備されれば時間短縮効果は大きい

さらに「JR東日本の羽田空港アクセス鉄道構想にも財政投融資を活用すべき」という声が聞かれるようになった。もし実現すれば、休止中の東海道貨物線を活用しつつ、東京貨物ターミナル-羽田空港間に新線を建設することで、新宿、東京、新木場という3方向と羽田空港が乗り換えなしで結ばれる。

JR東日本の試算では鉄道の輸送力が1.8倍に増強されるという。時間短縮効果も大きく、新宿―羽田空港間は現行の41~46分から23分に、東京―羽田空港間は現行の28~33分から18分に、新木場―羽田空港間は現行の41分から20分に短縮される。ただ、3200億円の事業費がネックとなり、JR東日本は単独での事業化は困難と判断。国や東京都に支援を求めている。

資金負担はリニアの10分の1

羽田アクセス線構想への財政投融資活用案について、JR東日本のIR担当者は「証券会社2~3社のアナリストからそうした問い合わせがあった」と認める。ただ、「当社としてまったく決定はしていない」と断言する。

仮にそのような案が出てきたとしても、元本返済を必要とする財政投融資での事業化はJR東日本にとって採算性の面で難しいのかもしれない。とはいえ、リニアの10分の1の資金でできる事業であり、実質的な工事期間も7年でリニアよりも短かい。JR東日本が納得しやすいスキームを検討する余地はありそうだ。

リニアありきで浮上した感のある財政投融資だが、整備新幹線、羽田アクセス線など鉄道分野だけでも使い道はいろいろあるはずだ。ただし、その原資は財投債の発行で賄われる。いわば国民の貴重な財産であり、慎重な議論が求められる。

(撮影:尾形文繁)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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