なぜ「IS」の残忍性は、増し続けているのか 85歳の司祭はミサ中に惨殺された

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ISはイラクとシリアで急速に地盤と戦闘員を失っている。それでも、欧州で警戒されながら、組織を存続させている。なぜなら、暴力、死、ISに惹かれる人々、特にイスラム教徒の若者がいるからだ。ISはそうした若年層に地獄のプラグを差し込んでいる。そして、若者は栄光の殺人、殉教以上に素晴らしい人生はないと感じているのだ。

ISはフランスの過激派ギー・ドゥボールが表現した「スペクタクルの社会」の中で行動している。その中では、表象がすべてで、表象こそ「状況の構造の中で過激な行動を通して」闘われる状態なのである。

ISの支持者が構築する状況は、平凡なイメージと日々の生活行動を突き破り、純粋なイスラム社会の勝利に備えている。

とても皮肉なことだが、ジハードを行う者が過激なポストモダニズムを使って、民主主義社会を中世の地獄的な独裁主義に引き戻しているのだ。ISに支配されたイラクの都市では - 中にはそこから脱出した者もいるが - 女性は家に閉じ込められ、頭からつま先まで覆われている。その他にも酷い行為が行われ、タバコを吸った男性が捕えられて口の中に熱した金属棒を押し込まれた。

「第六感」に頼るしかないのか?

そうした中で、自由社会を動揺させる戦略が機能している。フランス、ドイツ、英国は立法機関を通し、新しい法案を作っている (英国は最近、過激派の攻撃を免れているが、果たしてその状態はいつまで続くだろうか ?)。フランスでは非常事態が続いている。教会はシナゴーグと同じ道をたどり、警備員を雇うか、または警察や軍の保護を必要とするかもしれない。

哲学者で活動家のベルナール・アンリ・レヴィは、西側社会がイスラエル市民を見習い、迫り来る危険を察知するために「第六感」を磨くよう勧めている。イスラエルはハマスやヒズボラのテロの標的となり、その近隣は深刻な内乱に直面している。

フランスのある有名な有識者は、ISが私たちを「ハメた」方法について、欧州と北米の人々がイスラエル軍から学ぶよう勧めている。

(文中敬称略)

著者のジョン・ロイド氏はオックスフォード大学にあるロイターのジャーナリズム研究所の共同設立者で、同研究所でシニアリサーチフェローを務める。このコラムは同氏の個人的見解に基づいている。

 

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