米国株が最高値でも日本株がイマイチな理由 日経平均は1万7000円を簡単に突破できない

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米国株は史上最高値を更新。だが8日以降の日本株は必ずしも急騰とはいかないようだ。それはなぜか(写真:ロイター/アフロ)

米労働省が8月5日に発表した7月の米雇用統計は、市場予想を大きく上回る内容となった。市場では米国の年内利上げの可能性が再び高まり、為替市場では円安ドル高、株式市場では米国株が上昇した。

S&P500指数(2182.87p)とナスダック総合指数(5221.121p)は、終値ベースでの史上最高値を更新。コモディティ市場では、安全資産と言われる金価格が大幅安となり、ややリスク選好の地合いになった。8日以降の東京市場には追い風となるが、夏枯れ相場と言われる時期に突入していることから、日経平均株価など、指数の上値は重くなりそうだ。上がりにくくなる理由の一つには、今話題の日銀のETF買い入れも含まれる。なぜなのかは、のちほど説明しよう。

米景気の先行きに関する過度な警戒は払拭

7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+25.5万人で市場予想の同比+18万人を上回った。7月の失業率は4.9%で6月と同水準だったが、労働参加率は6月の62.7%から0.1ポイント上昇して62.8%になった。労働人口の増加が失業率の低下を阻んだようだ。市場関係者が注目していた平均時給に関しては、前年比+2.6%で上昇率は6月と同水準だったが、前月比では+0.3%と6月の+0.2%を上回っている。

市場関係者からは、「7月の雇用統計は労働市場の改善が続いていることを示す内容」との声が聞かれる。一方で、インフレが2%レベルに加速するためには、平均時間給のさらなる上昇が必要になるとの見方は多い。なお、7月は製造業、ヘルスケア、小売り、人材派遣、娯楽・ホスピタリティなどの分野で雇用者が増加したが、7月の広義の失業率(不完全雇用率)は0.1ポイント上昇して9.7%となっており、労働市場の緩みは解消されていないことも確認された。

つまり上記の内容をまとめると、今回の米雇用統計は、市場予想を上回る「ポジティブ・サプライズ」となったわけだ。7月29日の4-6月期GDP予想下振れ以降、米国景気の先行きに対する不透明感が高まっていたが、6月の雇用統計に続くポジティブな雇用統計に、米国景気の先行きに対する過度な警戒は払拭された感はある。

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