揺れるミャンマーの行方は、日本にも重要だ ミャンマー連邦のカギとなるパンロン会議

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しかし、少数民族問題の根は深く、少数民族側の「ビルマ族中心主義」への不信は今でも強い。現に、NLDは民族政党の合意なしに進めようとしていう批判も起こっている。

また、少数民族にとってアウン・サン・スー・チー氏は特別の存在でない。同氏が国軍をコントロールできるか疑問だと言う少数民族の指導者もいるそうだ。

少数民族の支配地域には豊富な天然資源

少数民族側でも対応を協議しているが、一つの部族だけでも一枚岩ではないと言われるくらい状況は複雑だ。

少数民族の支配地域には豊富な天然資源があり、少数民族側はこれらの権益の確保も求めている。

また、少数民族の支配地域である国境沿いでは、麻薬生産や鉱物の密輸が横行し、これに武装勢力と国軍の双方が関与しており、和平が実現すれば一部の武装勢力指導者は密輸による膨大な利権を失うとも指摘されている。カチン族の武装勢力が中国にひすいや高級木材を密輸して資金源としてきたのは一例だ。

会議はもともと7月中に開催予定であったが、実現しなかった。今は8月中に開催となっているが、それも確かとは言えないようだ。このように複雑な状況があるからだが、諸困難を克服してパンロン会議が成功裏に開催されることが望まれる。

ミャンマーで少数民族をも含めた民主的な連邦国家を実現するのはこれからであり、まず、民主化勢力、国軍および少数民族が互いに信頼関係を構築していくことが必要だ。そのためにパンロン会議がはたす役割は重要である。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

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みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

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