トヨタが早くも下方修正、「4割減益」の意味 為替を除いた販売の実態、投資の方針は?

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国内乗用車メーカー7社の中で、2016年4~6月期決算のタイミングで業績予想を修正したのはトヨタと富士重工業だけ。このうち通期の想定為替レートを円高方向に見直したのはトヨタのみだ。トヨタは決算発表の前月の為替相場を参考に、5円単位で円高方向に切り捨てるという手法で機械的に想定レートを決めている。これ自体、いい悪いという話ではなく、各社の考え方の違いによる。

ただ、いち早くトヨタが想定レートを見直したのに対し、中間決算(4~9月期)のタイミングで円高トレンドが定着していれば、他社も想定為替レートの見直しは避けられない。為替の減益分を打ち返すだけの販売増か費用削減ができなければ、遅かれ早かれ業績予想を修正する必要が生じる。

燃費不正の影響が大きい三菱自動車を別にすれば、各社ともグローバルの自動車販売は堅調だが、保護主義の台頭やテロの頻発など懸念材料には事欠かない。現状は、過度な悲観は不要だが、楽観もできないといったところであろう。

将来に向けた投資はしていく

豊田章男社長は今期を「意志が試される年」と位置づける。その心は、円高で大幅減益が避けられない状況でも、将来への種まきとなるような投資はゆるめないという決意だった。

しかし、今回、研究開発費、設備投資、減価償却費の計画をそれぞれ100億円減らした。内心は当初の決意が揺らぐほど状況は悪化しているのだろうか。

大竹哲哉常務は、必要な投資を抑えているわけではないことを強調(写真:記者撮影)

こうした疑問を打ち消すかのように、大竹常務は「やりたい、やろう、やるべきだ、は一切削減していない」と説明する。研究開発費の減額は、4月に導入したカンパニー制によって、カンパニープレジデントが開発から生産まで一貫して見るようになったことなどで、効率的な費用の使い方が進んでいることが大きな要因だ。また、設備投資や減価償却費は、海外分が円高によって目減りするためであり、必要な投資を抑えているわけではないという。

自動運転、電動化対応といった中長期の経営課題への対応を緩めるわけにはいかない。円高の逆風が強まる中、自動車各社の真の実力も試される。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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