金メダル18個の「怪物」を生んだ驚異の育成法 リオ五輪、競泳日本が警戒する最大のライバル

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コーチとしての私の主な仕事の1つは、アスリートが毎日、より高いパフォーマンスレベルを達成する努力をサポートすることにあります。1日の積み重ねがやがて1カ月になり、1年になり、そして前途有望な11歳の少年は世界記録保持者になりました。

継続的に目標をリセットし、私がそれを実現するためのプログラムを作る。新しいレベルに達すると、もっと上のレベルに移る土台ができたと考えます。マイケルと私が、みんなが不可能と思うことを実現する夢を共有し、互いにかけつづけた期待が、その夢を現実のものにしました。

スイマーであってもなくても、成功を手にする者はその種の「パフォーマンス・プレッシャー」を定期的に受けて成長します。あなたが営業担当で、自分と会社にとって大きな意味があるプレゼンに臨むなら、数日前に同僚にリハーサルにつきあってもらい、プレゼンの途中で邪魔をしかけてもらいましょう。たとえば、顧客の役をしてもらい、「悪いが急用ができたので、15分で終わらせてほしい。手っ取り早く頼む」などとプレッシャーをかけてもらうのです。

こうしたストレス因子に対応ができれば、プレゼン当日にプレッシャーを感じなくてすみ、ただ自分のできることをして、結果を待つことができます。

逆風をバネにする力は、誰でも身に付けられる

実際、マイケルは「失敗する恐れ」「傍観者からの放言」「期待に応えられないかもしれない状況」といった、あらゆる逆風をバネにしてきました。彼にとって、より良い泳ぎをするために使えないバネは1つもありません。水泳選手として成長する過程で、信じられないくらいの集中力を身に付けてきました。

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予想外の問題や挫折に直面することは、誰にでもあるでしょう。大事なプレゼンの日に1年生の子供がインフルエンザにかかったワーキングマザー、娘のバスケットボール選手権の試合にコーチとして出場するはずが、飛行機が遅れて間に合わなくなった父親、試験で失敗して、一流大学に行く計画がおじゃんになった高校3年生――。

そうした場面で立ち直る力は、自然に身に付くものではなく、育てるものです。

私はどんな試合でも、上位で競い合えるだけの才能を持つ大勢の若い選手を育成してきました。彼らは試合に負けたり、苦境に陥ったりすると、落ち込んで、あきらめて、水泳を辞めかねない精神状態にまで追い込まれます。だから私は彼らに、彼ら自身がそれを力に変えることができるということを、示さなければなりませんでした。

彼らが学んだことは、そのままあなた自身が遭遇する局面にも通じるはずです。

ボブ・ボウマン 水泳アメリカ代表コーチ

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ぼぶ ぼうまん / Bob Bowman

サウスカロライナ州コロンビア生まれ。フロリダ州立大学で心理学専攻。アメリカ水泳連盟のエリートシニアプログラムで選手の育成に携わり、ノース・ボルティモア・アクアティック・クラブ(NBAC)でもエリート育成プログラムを担当。マイケル・フェルプスをはじめ、多くの金メダリストを育成。

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