おカネにまつわる本音と建前 金銭感覚のリアリティを問い直す

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物品を購入する際に、複数の会社に相見積りを取るのは大原則ですが、極端に高い会社がたまにあります。

話にならんとテーブルを蹴って、単純に次の購入の際は声をかけないというのが自然の流れですが、私はその価格があまりにも極端に高い場合、自社の相手に対するスタンスを疑うことが多いです。

見積もりを取った相場から特定の相手だけ金額が離れているのは、多くの場合相手が本気で取りに来ていない(買ってもらえると思っていない)ということです。自分が相手を本気にさせていないということです。

価格交渉は真剣勝負であり、つねにぎりぎりの攻防のわけですが、明らかに勝負を投げられているわけです。そこでの問題は相手にあるというより、本気にさせられない自社のスタンスにあると考えるべきでしょう。不信感は相手にではなく、自らに向けるべきだと思います。

「コスト改善とは節約である」という誤解

コスト意識を持つというのはとても重要ですが、それが行き過ぎて節約にばかり頭がいくようになると、けちくさい組織風土が出来上がります。コスト改善と節約とは違うと思います。節約を進め規律を強めすぎると、その先でおカネを使うこと・投資することに皆が消極的になり、新しいものが何も出なくなります。

逆説的ですが、現実におカネを使ってコスト削減という施策もたくさんあります。たとえば当社のようなバス・タクシー会社の場合、新しいバス(正確には筋のよい中古バス)を導入して、修繕費、補修費が多くかかっていた老朽車両と入れ替える。タクシーで低燃費車を購入して、長期で燃料費を回収する。フロアにLEDを導入して長い目で光熱費を落としていく……。

いずれも卑近な例ですが、会社のさまざまなものがリニューアルされたうえでトータルのコストが下がるというのは、とてもイノベーティブだと思います。

とにかくコスト削減のみで企業を再生させようとしても無理があります。一時的に大きく縮んでも、その先の売り上げ成長を果たしてこそ、本当の再生です。一時的なコスト削減のために企業風土まで貧乏くさくおとしめてしまっては、本末転倒だと思います。

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