日本車に活路、“世界最強”部品大手の選択 独ボッシュとデンソーの微妙な関係

拡大
縮小

なぜ欧州系の世界最大手が、日系の開拓に躍起になるのか。

独ボッシュのフォルクマル・デナー会長

背景にあるのは売り上げの半分以上を占める欧州市場の低迷だ。2ケタ増の北米、中国の景気減速があっても5%の伸びを見せたアジアとは対照的に、欧州は前年比2%の減少となった。「債務危機の影響も和らぎ、欧州経済は安定化に向かっているが、南欧を中心にいまだ厳しい。13年も欧州の自動車市場は昨年に引き続き2%ほど縮小するだろう」(デナー会長)。

そこで目をつけたのが為替リスクの回避や製品の現地化を加速させるべく、新興国で現地生産を拡大してきた日系メーカーだ。足元では円安という追い風もある。「新しい技術革新導入の意思決定が行われるのは日本、生産が拡大するのは新興国。日本にも新興国にも根を張るボッシュのグローバルネットワークは大きな強みになる」(デナー会長)。

競合・デンソーとの資本提携を解消

ボッシュが日系メーカーへの供給を強めれば、デンソーなど日系部品大手との競争は激化する。ボッシュは昨秋、保有していたデンソー株のすべてを売却すると発表、資本提携関係は解消された。デナー会長は「株式売却はあくまでも買収資金に充てるなどの財務的な判断。戦略的なものではなく、成功している合弁事業をやめるつもりはない」と話す。

2社の関係は1953年の技術導入契約締結にさかのぼる。その後はスパークプラグの製造やカーナビ用LSIの開発などで協業を進めてきた。デナー会長は、競合関係が資本提携の解消につながったことを否定したものの、それまで豊田自動織機に次いでデンソーの第3位株主だったボッシュが、その出資を引き揚げた意味は小さくない。

デナー会長は会見の前日、2月21日に開かれたトヨタ自動車の「グローバル仕入先総会」に出席。その場でサプライヤーへの最高の賞といわれる「グローバル貢献賞」を受賞した。日系最大手トヨタとの蜜月は、ボッシュが目指す方向を示している。トヨタをめぐって、ボッシュとデンソーの関係が変化してきているのは間違いない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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