"宇宙ママ"、ゴールの見えない日々の越え方 新世代リーダー 山崎直子 元JAXA宇宙飛行士

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――なぜ状況把握のノウハウが重要なのですか?

宇宙へ行ったとき、宇宙船がどうなっているのかを示すデータがたくさんあります。そのデータは数値であったりして、必ずしもわかりやすく表現されてはいません。だから雑多にある情報の中から、その本質を見つけていかなければならないのです。

(出典:NASA)

そもそも、宇宙へ行く道のりが非常に長い。日本は宇宙船を持ってないので、宇宙に行くまでの期間が平均10年ぐらい。アメリカでもロシアでも状況によっては、10年前後かかる人もいます。ですから、“宇宙へ行く”というゴールがまったく見えないんです。

この状況の中でゴールを信じつつ、「今は何をすべきかを考えてください」、逆に言えば「考えられる人であってください」というのが、組織から求められていることだと、よく感じていました。

――何をすべきかというのは、能力を高めるということですか?

自分自身の能力を高めることはもちろん前提ですが、私たちの日頃の業務のなかで訓練は半分以下で、残りの半分以上は地上での業務。この地上業務では、宇宙船の開発チームと打ち合わせをしたり、地球の周りを回っている国際宇宙ステーションで使う手順書を作ったりと、いろいろな仕事を分担します。

実はこういった地上業務のほうが大きな役割をしめていて、しっかり仕事をしていないと、宇宙に行く機会が与えられません。

そもそも、宇宙船が事故を起こし、飛べない状況になってしまえば、私たちは宇宙に行けません。自分たちのスキルを高めるだけではミッションにこぎ着けられないのです。

宇宙飛行士だって、サラリーマン

――宇宙飛行士は、「すごいエリート」や特別な存在に見えます。

私たちも日本であれば、JAXAという組織の一員ですし、アメリカでもNASAという組織の一員です。ある部門の中で働いているという意味では、サラリーマンです。休暇を取りたいときには、「休みを取ります」と上司のハンコをもらいます。宇宙へ行くときも出張扱いですから。

片や、いろいろな方に宇宙のことを伝えたり講演をしたりと、外との接点的な役割とを担うこともあります。宇宙ライターの林公代さんが「宇宙飛行士はサラリーマンの中間管理職」という表現をされていますが、まさにそのとおりです。

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