中選挙区制の罪深さ、育てるべきは政党だ ノスタルジーを捨て、今考えるべきこと

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「新人」でも統制できない?

小選挙区制の導入で当初の期待が実現したところはあるとしても、手放しに評価できるわけではない。

政党内では、強い執行部が所属議員たちを統制することで、効率的な意思決定が可能になることを目指すが……(撮影:尾形文繁)

いちばんの問題は、期待されたような「強い政党執行部」が必ずしも実現してはいない点だ。民主党政権では、強いはずの政党執行部が「経験不足の新人」の統制に失敗するという情景がしばしば見られた。

「経験不足の新人」が執行部に造反するのは不思議ではない。彼らとて選挙区の利益を背負った代表なのである。小選挙区制は、確かに政党内での同士討ちを基本的になくしたが、議員が自分たちを支持する選挙民の利益を代表しようとする点では、中選挙区制と変わりない。

いかに内閣総理大臣の権限を強くしても、政党内で個々の議員が執行部に譲る姿勢を見せないかぎり、効率的な意思決定は行われないのである。

派閥の長だけ説得すればよかった中選挙区制と比べて、政党執行部が与党の全議員を説得しなくてはいけない小選挙区制で、意思決定の困難は増したと言える。

統制の問題をそのままに中選挙区制を復活させても、状況は本質的に変わらない。良くて派閥政治への逆戻り、悪くすれば選挙区での当選のために特定の組織・団体のみに頼る議員たちが大量に出現し、彼らを統制することはさらに困難となるだろう。

そのような議員たちは連続当選するだろうが、それをすぐに「天下国家を語ることのできる優れた政治家」とは評価できない。

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