年内の米利上げ観測に左右される「日本株」 円高影響少ない中小型株の決算発表に注目

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一方、高値更新が続いていた米国株も割安感が薄れ、足元では下落基調が続いている。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の原油先物相場が1バレル=40ドルを一時下回り、3カ月ぶりの安値を付けた。ただ、テクニカル面では長期投資家の売買コストを映すとされる200日線は40.67ドル(8月1日時点)。16年2月安値(26.21ドル)から同年6月高値(51.23ドル)の半値押し水準が38.72ドル。ここからの下値は限定的ともいえよう。

8月5日に7月の米雇用統計、8月17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公表、8月26日にはイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長講演が控えている。なお、市場予想による年内の米利上げ確率(7月末時点)は、9月会合(9月20日~21日)で25%前後、12月会合(12月13日~14日)で45~50%と見込まれている。仮に米利上げへの観測が台頭すれば、日米金利差の拡大の見込みが続き、日本株の見直し買いにもつながろう。

アベノミクス相場といわれてからの日本株は予想PER12~16倍台で推移している。2016年6月~7月、英国のEU離脱決定や伊銀行の不良債権問題等から投資家のリスク回避姿勢が強まり、ドル円は一時99円台までの円高が加速した。日経平均株価も一時1万5000円を下回ったものの、解散価値といわれる株価純資産倍率(PBR)で1倍に近づいていた。

底放れの条件は整いつつある

国内企業の2017年3月期の想定為替レートは1ドル=105~110円。輸出企業の業績下方修正に対する過度な懸念はひとまず遠のいている。仮にドル円を105円で想定した場合、予想PER12~16倍から弾いた日経平均株価は1万4800~1万9800円。ちなみに2016年に入って1万4952円で下げ渋っている。

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8月2日、日経平均株価は1万6391円と、3営業日ぶりに反落した。海外株の軟調な動きを受けて、運用リスクを避ける動きが強まった。今後は8月中旬に向けて中小型株の決算発表が始まる。主力の輸出関連株に比べて円高の影響が小さい中小型株でも、堅調な業績が確認できるかどうか注目されよう。日本株はもう一段の戻りを試すには円安の継続性にかかっているものの、年前半の下値固めから需給面では底放れの条件が整いつつある。

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中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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