ダイソンが独創的な製品を編み出せた理由 創造とは何もないところからは生まれない

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サイクロン式掃除機をはじめ独創的な製品の開発を続ける(写真は表参道店、撮影:今井 康一)

サイクロン式掃除機や、その技術を応用したコードレス掃除機、羽根のない扇風機など、独自のデザイン・機構の製品で存在感を放っている英国の家電メーカー・ダイソン。最近は羽根のないドライヤー「ダイソン・スーパーソニック」を発売し、美容家電ジャンルにも参入。定価4万5000円とライバルメーカーの最上級製品の2倍を超える強気の値段設定が話題になっている。

現在のダイソンを支えるのは、紙パックを使わないサイクロン式掃除機のヒットだ。筆者は以前、同社創業者のジェームズ・ダイソンによる『逆風野郎! ダイソン成功物語』を読んだことがあるが、そこにはサイクロン式掃除機をどのように発想・発明したかが、意外なほど詳細に書かれていた。この発想の裏にある「思考」について考えてみたい。

隣の会社の屋根にあった「あるもの」がヒントに

開発のきっかけは、ダイソン自身が毎週末に自宅の掃除をしていたことだ。

紙パックにはわずかのゴミしかたまってないのに、目詰まりで吸引力が落ちて、パックを交換せざるを得ないことを、彼自身、とても腹立たしく思っていた。普通の人なら「掃除機というのはそんなもの」と思ってしまうところを、ダイソンは「なんとかして吸引力の落ちない掃除機ができないものか」と考え続けた。

そうした中、彼は勤めていた会社の隣にある製材所の屋根に、巨大な円錐を逆さにしたような装置が取り付けられていることに気づいた。聞くと、製材時に出る「おがくず」をフィルターなしで吸引するサイクロン式集塵機とのことだった。

ダイソンは週末にその工場に潜り込み、この集塵機の構造を細かく調べた。円錐の上のほうから、チリ(おがくず)を含んだ空気を斜め下方向に吹き付けると、空気は円錐の内側をらせん状に回転して渦ができ、断面積が小さい下のほうへ行くほど渦の回転速度が速くなる。チリにはものすごい遠心力がかかり、この力を利用して、チリと空気が分離される。

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