シニアは「高齢者」ではなく「人生の上級者」だ 人生後半をどのように生きるべきか

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──「役割」の章で奥野老人が、「使命は上から与えられて固まっているもの、それに対し役割は自分の中から湧き出て変わるもの」と言います。使命は時に邪魔になる?

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戦時中、「使命」という言葉で国の犠牲になる人々を見てきたから、老人はその言葉にアレルギー反応を示す。「役割」は意志の力ですね。今ここで自分はどういう態度を取るべきか、つねに考え続けるのです。

たとえば、データ偽造など企業の不祥事が近年頻発していますが、高い目標を提示され絶対達成しろと「使命」を担わされる。それに縛られて思考停止になったらおしまい。本質的に自分が守るべきものは守り、断るべきは断る意志を持つ。そこで必要なのが自分はどういう態度を示すか、です。それをあきらめちゃうと、東条の言う「生まれたくもないときに生まれて、死にたくもないときに死なされるのが人生」になってしまう。そうじゃない、人生に意味を持たすために、自分の意志でその場その場の態度を決めていくことが必要です。

「品格」とはいったい何なのか

そこまで大げさじゃなく、「普通のパッとしない、誰の自慢にもならない、みっともないけど長生きして、できることを自分なりにやって、死ぬまで一生懸命生きる、という役割があって、それを愚直に受け入れ、できることをするのが私の人生に対する態度」という奥野老人の矜持も、一つの立派な役割であり態度です。

──「品格」って言葉は難しい。

そうですね、私もそれが何か明確には答えられない。ただ、それを明示してしまった時点で、私がやろうとした本じゃなくなるんです。仮に今五つ挙げるとしても、10年後は違ってるかもしれないし、ましてみんなに当てはまることではないし、それを押し付けることこそ上から目線という気がする。だからそこは読者に考えてもらいたかった。考え続けるということがたぶん大切で、考えさせる本にしたかったんですね。

東条が奥野老人と知り合って一緒に品格を探した旅に読者もピタリと寄り添うことで、自分にとっての品格を、そして何か気づきを得てくれればうれしい。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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