ポケモンGO批判の裏に透ける車社会の奢り 本来の暴力性をあるがままに肯定できるのか

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現在、レアなポケモン目当てに、ポケストップや人が多い場所に集まるトレーナーが多く発生し、騒ぎになっているが、そうした人たちは夏休みも終われば、その大半が姿を消すだろう。効率のいい場所に陣取り、ひたすらゲームに没入してポケモンをゲットするやり方は、プレースタイルの1つとして否定されるものではないが、決して楽しいものでもないだろうから。

ポケモンGOは、街を歩くことが主

一方で、もともと散歩や街歩きが趣味という人にとっては、ポケストップの存在がちょうどいい目的となる。あくまでもポケモンGOは、街を歩くことが主で、ポケモンを捕まえることが従なのである。だからポケモンを集めたいだけの人にはいささか退屈なゲームかもしれないが、ポケモンを集める過程で、知らない土地を歩いてみたり、知っている場所でも知らなかったことを発見できたりすれば、ポケモンGOは優秀な「散歩のおともアプリ」に変質する。

ポケモンGOで遊びながら街をうろつく行為自体を否定することは、自動車という交通手段が元来持っている暴力性をあるがままに肯定することに等しい。

日本でも一時期「スマートシティ」という言葉が流行した。渋滞緩和のため都市部への自動車の乗り入れを制限し、街中には歩ける範囲に多くの機能を持たせWi-Fiなどのユビキタスも充実させた街のコンセプトながら、日本ではいまだ実現もせず、すでに事実上終わったことになってしまっている。

だが、ポケモンGOを単なるゲームとして片付けるのではなく、これだけ世の中に普及し、最低限のコミュニケーションのためにすら必須のツールとなったスマホを使った新しい方向性が生まれたと考えると、スマートシティ的な取り組みや都市デザインの可能性を今一度探ることも十分に価値があることだろう。

赤木 智弘 フリーライター

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あかぎ ともひろ / Tomohiro Akagi

1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。

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