ポケモンGO批判の裏に透ける車社会の奢り 本来の暴力性をあるがままに肯定できるのか

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そうした問題は今でも続いている。幹線道路の混雑を嫌う車が、決して車が頻繁に通るようには設計されていない道路に我が物顔で入り込み、地元住民を危険にさらしているという話は珍しくない。

人々の動線も変わった

道路を占拠した車は、人々の動線を変えた。すでにお店が立ち並び、歩いて買い物をするには便利だった駅前や地元の商店街は駐車スペースを確保しにくいことから敬遠されがちになり、少し郊外にできたスーパーやデパートに人の足ならぬ、車の車輪が向かうことになった。そして幹線道路沿いが発展する一方で、地元商店街には徐々にシャッターを閉めたままの店が増えていった。

そう考えると、ポケモンGOブームによって今、人々が道路を再び「人の歩く道路」、すなわち生活の一部としての遊びの場としていることは、一方的に否定しきれるものでもない。

自動車に乗っていればその場所は「通過地点」にすぎないが、人が道路で遊ぶことにより、その土地は人間の生活の場として見直される。米ナイアンティック社が以前から運営している位置ゲーム「Ingress」で積み立てられた情報を集約した、ポケモンGOの「ポケストップ」は、長く住んでいる人でも知らなかったり、あまり気にしていなかったりするロケーションを新たに発見するきっかけになってくれる。

東日本大震災で流されてしまい、今は存在しない施設などにポケストップが設定されていることもある。これはIngressで被災地に対する支援として、日本のユーザーとともに設定したスポットがポケモンGOにもそのまま使われているものである。

また、ネット上の話なので、本当か嘘かはわからないが、草ぼうぼうであまり気にされていなかった公園がポケストップになったことにより、人が集まり、近所の人たちが草むしりを始めて交流が生まれたという話もある。

そもそもポケモンGOをプレーしてみて思うのだが、ポケモンGOのゲーム性自体は薄く、何の目的も持たずにプレーすればすぐに飽きてしまうようなゲームデザインである。多くのスマホゲームのように、スマホの画面に集中するような要素を持っていないから、実際に配信が始まって数日後からすでに「ポケモンGO飽きた」とSNSに書き込む人が多くいる。

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