新都知事で実現?銀座〜有明「地下鉄構想」 五輪後の臨海部発展に中央区は期待するが…

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11月にオープンする豊洲市場の最寄りとなる、ゆりかもめ市場前駅。BRTバスの停留所、そして地下鉄の駅の想定地にもなっている(筆者撮影)

さらに、晴海・有明と虎ノ門・新橋を結ぶBRTバスとの競合も懸念材料だ。

輸送需要の推計をする際にBRTバスの存在も考慮して試算されている。ただ、BRTと地下鉄の想定ルートはほとんど同じ位置で、バス停と地下駅の予定地も重なっている。BRTバスの輸送力は大きいし、所要時間は都バスよりかなり短縮される。なのに、わざわざ地下鉄を整備すべきなのか。もう少し丁寧な議論が必要になる。

中央区役所が、2014年になって突然、地下鉄構想にこだわり始めたのは、2016年に公表された交通政策審議会の答申に盛り込んでもらうのが狙いだった。

過去の鉄道計画を振り返ると、審議会答申で取り上げられること、イコール旧運輸省のお墨付きを得たことと解釈されてきた。実際、答申の計画地図を基に鉄道整備がなされた。

2016年の答申ではどうか。審議会は、答申で24の計画路線を列挙したが、実現に向けた課題を指摘するに留まった。鉄道事業の規制緩和で、国はそれぞれの計画について優劣を判断する立場ではなくなった、との考え方があるからだ。プロジェクトを事業化するのは、鉄道を要望する関係地方公共団体や鉄道事業者であり、自分たちで将来需要を見通し、採算について十分な検討を行い、整備主体や営業主体を確立することを求めている。

小池新都知事の方針はどうなる?

中央区は2015年度の報告書でいったん活動を終えて、都庁や国交省、関連機関の反応を待つ姿勢のようだが、受け身では永遠に具体化しないだろう。

東京都庁の立場はどうなのか。2000年以降、都庁、そして歴代都知事は都内での鉄道新線整備に消極的な立場を続けてきた。

臨海地域地下鉄は、都の報告書「広域交通ネットワーク計画について」(2015年)で、目標への寄与度、収支採算性、費用便益比とも最高評価とされた。ただ、8号線分岐線や12号線延伸線(光が丘~大泉学園町)など5路線が「優先的に検討すべき路線」とされたのに対して、臨海地域地下鉄など14路線はワンランク下の「検討すべき路線」とされた。実際に検討されるのは、かなり後回しにされそうだ。

8月2日に就任した小池百合子新都知事がどのような方針を打ち出すのか。臨海地域地下鉄の行方は、新都知事のビジョンにも大きく左右される。

森口 誠之 鉄道ライター

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1972年奈良県生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科前期博士課程修了。主な著書に『鉃道未成線を歩く(国鉄編)』『同(私鉄編)』など。

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