エリートたちのキャリア・恋愛事情<最終章> インドで悟った真実の愛

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 グローバル化の進展により、国の枠を超えて活躍する「グローバルエリート」が生まれている。しかし、そのリアルな姿はなかなか伝わってこない。グローバルエリートたちは何を考え、何に悩み、どんな日々を送っているのか? 日本生まれの韓国人であり、国際金融マンとして、シンガポール、香港、欧州を舞台に活動する著者が、経済、ビジネス、キャリア、そして、身近な生活ネタを縦横無尽につづる。
普段の仕事から離れ、インドで生活してみると、キャリアやおカネより大切なものがよくわかる

 浮かぶ赤ん坊の遺体。それをついばむ野良犬。

川べりでは大きな牛が息も絶え絶えで横たわっている。

旅行者に殺到する子供たち、そして怪しげな草を売りにくる売人。

冬なのに“インドだから暑いはず”と勘違いした短パンと、似合わないアグラ製の赤いセーターを着た大柄な男が、息絶え絶えの白い牛に、ブドウとバナナを買い与えている。

善行をわざわざ読者に伝え、人知れぬカルマ落としを台なしにした彼はそう、現在ムンバイで「グローバルエリートは見た! 恋愛特集」の第2弾が大して人気がなかったことに相当焦っているムーギー・キム氏、つまり私である。

スラム街の家族に泊めてもらい、現地の聖人のテントに寝泊りし、2ルピーのチャイを飲みながらガンジス川で焼かれる遺体で暖をとる毎日。

トイレに紙がなくてもおかまいなし。頼んだラッシーに怪しげな草が交ざっていても、ノープロブレムである。

滞在する魅惑の国インドは、皆さんの“株価を気にし、投資先社長とのミーティング準備に追われ、財務モデルのアップデートに追われる日々”を相対化するのに、格好の機会を提供してくれる。

こちらにいると、長くいすぎてはいけない、と多くの本や友人にアドバイスされた理由がわかる。東京や香港、シンガポールの高層ビルのてっぺんで起こっている資本主義のことなど、どうでもよくなってしまうのだ。家族がいて、友人がいて、神のそばにいられたらそれでいいではないか――。

城氏とのキャリア特集とバレンタイン恋愛特集を執筆している間も、数多くの方々から相談をいただいた。

「NGO出身のドイツ人の女性が民間企業に転職してきたのですが、営利団体の文化になじめず浮いてしまっています」(28歳フランス人男性)

「インド人同僚間の議論があまりに攻撃的で、どうでもいいことを早口で長々と情熱的に話し続けるので本当に辟易としています」(30才ポルトガル人女性)

「大手建設会社で幹部候補としてドバイ駐在を言い渡されたのですが、本当にこの仕事をしたいのか、わかりません」(27歳レバノン人男性)

私はこれら通常のキャリア相談に答える前に、そのすべてのアドバイスに共通する、キャリアやおカネより大切な世界観や人生哲学(そもそも人生で何がいちばん大切なのか)という観点から本レポートを捧げたい。

次ページ外国語を話せても、自国語を読めない
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