自動運転、国内で報告された不具合と実態 普及価格帯にも続々投入、何に注意すべき?

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事故に関してはどうか。警察庁によれば、2015年12月以降、自動ブレーキやACCに関する交通事故が2件あった。これは同時期に都道府県警から自動運転機能の過信が原因とみられる交通事故の報告を求めるようになったため。それ以前の情報は警察庁では把握していない。

メーカーから国交省に報告された事故・火災情報を調べると、2010年以降の7956件のうち、自動運転に関係すると思われる事故は11件あった(非乗用車含む)。

後にリコールとなった自動ブレーキの不具合による誤作動が2件、センサーの特性による誤作動が5件、ACCや自動ブレーキは正常に作動していたが衝突を回避できなかった、「性能の限界」とでも呼ぶべき事故もある。

警察庁の把握分と合計すると全13件。このうち物損が8件、軽傷が5件と、幸い国内で死亡事故は起きていない。が、それは運がよかっただけ、ともいえる。

事故減少や渋滞の緩和に有効な面も

では、自動運転を危険視し、立ち止まるべきか。

当記事は「週刊東洋経済」8月6日号<8月1日発売>からの転載記事です

国交省の幹部は「自動運転技術が安全に寄与することは間違いなく、普及を妨げてはいけない」と強調する。米国運輸省も自動ブレーキによって交通事故を35%減らせるという見解を示している。富士重工業の調査では同社の自動運転技術「アイサイト」搭載車は、非搭載車に比べて事故率が約6割減少した。渋滞の緩和にも自動運転機能は有用とされている。

不具合や事故の情報から得られる教訓は、自動運転技術は発展途上という当たり前の事実。それを安全に使いこなせるかはユーザーにかかっている。だからこそ、メーカーは技術開発と同時に、ユーザーが性能を過信しないよう丁寧な情報提供が必要だ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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