日銀黒田総裁の一手より「大事なこと」がある ついに「運命の7月29日」がやってきた

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「金融政策は、マーケットのために行うものではない」というのが確かに正論だが、経済政策はマーケットを経由する効果にも影響されるので、政策の決定者がマーケットの反応を無視することが正しい訳ではない。

もっとも、こんな心配をしなくとも、安倍首相も黒田日銀総裁も、為替市場や株式市場の動向は人一倍気にしていることだろう。マーケット参加者から見て、仮に今回日銀が「金融緩和ゼロ回答&様子見」であれば、相当の円高と株価下落になることが予想できる。黒田総裁は、予想されていることはやりたくないと言った、やや天の邪鬼の傾向があるように見受けるが、さすがにこの状況は避けるのではないか。

いかにも「ありそう」なシナリオとは?

日銀は「何か出してくるのではないか」と普通は思う。だが、その手段と程度がどう評価されるのかについて、正確に予想することは困難だ。

平均的な予想は、(1)マイナス金利の多少の拡大(-0.1%→-0.2%)、(2)ETF、REITなどのリスク資産の購入枠拡大、(3)国債買い入れ額拡大、(4)地方債・社債などへの購入対象拡大、(5)貸出支援基金へのマイナス金利適用、といった政策が2つから3つくらい実現することだろう。

(1)と(5)は貸出金利の低下を招くとして銀行筋の評判が悪く、(2)も日銀がこれ以上の大株主への道を歩むのも筋がいいとは言えない。(3)には金額的な限界があり、(4)は日銀が信用リスクを負う。いずれもなにがしかの難ありだが、何もしないのはもっと悪い。

いかにも「ありそう」なのは(1)、(2)、(3)が少しずつ出て来るというくらいの追加緩和だが、いかにも「しょぼい」。マーケット的には、「追加緩和決定」の報で株価が数分上がり、内容が評価されるにつれて「失望売り」に流れが変わるようなパターンだろうか。そして、気づくと大幅に円高に振れている、というような流れになると、失敗感が拡がるだろう。

一部で期待されている「ヘリマネ」(ヘリコプターマネー政策)までは、踏み込まないような気がする。ヘリマネは、言葉が一人歩きしている感があるが、例えば政府が永久債を発行して日銀がこれを引き受けて資金供給するような、将来の増税によって償還する必要のない財源に対する日銀のファイナンスを指す政策だ。

次ページ「ヘリマネ」を期待するよりも・・
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