複数内定取っても「本命」決められない就活生 短期集中で活動した結果、返って募る不安…

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ところで、当の学生達はスピーディに進んだ就職活動に満足しているのでしょうか。例年、採用選考解禁から少し経つと、大学のキャリアセンターや就職カウンセラーに駆け込んでくる学生が増えてきます。従来から多いのは「持ち駒がすべてなくなりました。どうすればよいか?」という相談。これは今年もやはり目立つようです。

また求人倍率が高くなると、「複数の企業から内定をもらった。本命以外の企業にどう断ればよいか?」と助言を求める学生も一定数発生します。

自分で本命企業を決められない

ところが今年は少し違ったタイプの相談が寄せられているようです。それは「このままいくと複数社から内定をもらうことになりそうだが、その中から本命の1社をどうやって決めたらよいのかわからない」といった類いのものです。

過去、少なくとも2015年卒生までは、最初にある程度幅広く企業をリストアップし、そこから就職活動のプロセスを進める中で吟味を重ねて徐々に絞り込み、最終的に残った会社からの内定を獲得して活動を終了する、というのが標準的な就活でした。

しかし、2017年卒の場合は、吟味する時間も十分にとれないままに内定獲得直前まで突っ走ってしまった学生も一定数いたということでしょう。このように「まっしぐら型」で進めてきた学生は、自らの就職活動への不全感を払拭できず、不安を抱えているかもしれません。また、企業にとっても内定辞退のリスクが存在する状態にあるわけで、双方にとって望ましいことではありません。

就職先選びは、学生の皆さんにとって極めて大きな決断の1つであることは間違いないでしょう。特に今年のような圧縮スケジュール下の就職活動では、情報収集などが不足していた可能性もあります。そしてこの「内定先のことを実はよく知らない」ことは、不安の主因になり得ます。その場合、解決策はシンプルです。足りない情報を取りに行けばよいのです。

もしも、「脇目も振らず就活をしてきて、終わってホッとはしたけれど、肝心の就職先は本当にこれで良かったのだろうか?」という不安があるならば、まずは家族、友人、大学のキャリアセンターなどの第三者に相談してみてください。自分の置かれている状況を客観視するためのなんらかのヒントが得られるはずです。

未知の未来に不安があるのは当たり前。幸い企業の採用意欲は引き続き堅調ですから、一度気持ちをクールダウンさせ、何が不安の要因なのかを特定し、解決のアクションに繋げていってほしいと思います。

岡崎 仁美 リクルートキャリア 就職みらい研究所所長

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おかざき ひとみ / Hitomi Okazaki

1993年(株)リクルートに新卒入社。以来一貫して人材関連事業に従事。転職情報誌『B-ing関東版』副編集長、転職サイト『リクナビNEXT』編集長、『リクナビ』編集長を歴任。2013年3月、就職みらい研究所を設立し所長に就任。現在、内閣官房「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」「地方創生インターンシップ推進会議」、文部科学省「インターンシップ推進方策実行ワーキンググループ」等の委員を務めている。

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