ヘリコプターマネーは、どう考えても危ない 高インフレが発生して制御できない

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誰も負担せずにおカネが空から降ってくる?!(Caito/PIXTA)

7月中旬に来日中だったベン・バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)前議長と安倍首相が首相官邸で会談したことで、金融市場では政府・日銀がヘリコプターマネーに踏み切るのではという思惑から一時円安が加速した。バーナンキ氏は、日本がデフレから脱却する方法として、おカネをばらまくという議論をしていたことから、「ヘリコプター・ベン」というあだ名がある。

ヘリコプターマネー(ヘリマネ)は、もともとは、ミルトン・フリードマンが「ある日ヘリコプターが飛んできて、空からお金を落として行ったと仮定しよう」という例えを使ったことに由来する。しかし本来の趣旨は、必要以上におカネ(マネー)を供給することに対する警告とみるべきだ。

フリードマンが使った1万円札などの紙幣を大量にばらまくという例は、具体的に何が起きているのかイメージしやすいので、以下ではこれを使って原理の説明を続けよう。ただし、現実の経済では現金だけがおカネとして使われているのではなく、むしろ預貯金の方が圧倒的に多い。後で述べるように、紙幣のような現金はヘリコプターマネーで供給されるおカネのごく一部に過ぎないので、現金をばらまく話よりも現実ははるかに大きな規模の問題が起こる恐れがある。

ヘリコプターマネーを実現する方法

現実にフリードマンが言ったとおりに空から何兆円もの1万円札をばらまいたら、お札を拾おうとする人で大混乱に陥ってしまうが、ヘリコプターマネーと同じ効果があることを実際に行う方法はいろいろ考えられる。

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例えば、政府が赤字国債を発行して日本銀行に購入させ、かつての地域振興券のような商品券や給付金を家計に配る方法だ。財政赤字で公共事業を行ったり物資を購入したりすることも、単純にお金をばらまくというやり方とは違うが、企業や消費者が持っているおカネを増やすという点では同じ効果がある。二つはともに財政政策で、違いはお金が支払われると同時に何か経済活動が行われていてGDP(国内総生産)が増えるかどうかという点だ。

財政赤字を賄うために政府が発行した国債を日本銀行が市場から買い入れることは、通常の金融緩和政策で行われている。では、何をもってヘリコプターマネーというのか。論者によってまちまちだが、ここでは日銀が協力することで償還する必要のない方法で政府が資金を手に入れて使うこととしよう。

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