ゼネコンの未来を変える「3D改革」の衝撃 鹿島、大幅増益の知られざる立役者

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その動きは世界的にも注目されている。BIMの国際標準化団体であるビルディングスマート(本部・英国)は、2016年2月に建設会社では初めて鹿島を理事会メンバーに招聘。同団体では戦略諮問委員会を6社で構成するが、建築設計事務所最大手の米HOK、国際エンジニアリングコンサルタント会社の英アラップ、BIMソフトの米オートデスクなどと並んで、鹿島をその1社に選んだ。

今後は独ホットティーフ、スウェーデン・スカンスカなど世界的な建設会社と連携しながらBIMの国際標準化に取り組む。鹿島の「Global BIM」が、事実上の世界標準となる可能性も出てきている。

BIMの新会社を設立し受託サービスを開始

鹿島のBIMへの取り組みは自社内だけではない。同社は近日中にもBIMの新会社を設立し、施工図や施工計画作成の受託サービス事業を立ち上げる。現在は沖縄、韓国、フィリピン、インドにデータセンターを設置しているが、欧州はセルビア、米州はメキシコに新たに拠点を設けて24時間運営で世界中の建設会社にサービス提供できる体制を整える。

また三菱総研とは「施工計画AI(人工知能)」の開発も進めており、優秀な現場管理技術者の知識や経験を引き出せるようにする。国内では将来的に現場管理技術者の不足が懸念されており、技術者が育っていない新興国などでも需要が見込める。

これまでゼネコン各社は海外事業の強化に取り組んできたが、現地での施工体制を整えることは簡単ではなく、受注拡大には限界がある。しかしICT関連ビジネスであれば品質・価格競争力次第で世界規模で大きく伸ばすことも可能だろう。BIMはゼネコンのビジネスモデルを変える可能性をも秘めている。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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