自動車の未来を左右する「地図情報」の現在地 オールジャパンで自動運転時代をリードせよ

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また、カーナビは目的地までルート案内してくれるが、過去の地図情報を提供しているに過ぎない。実際の道路は複雑だ。道路工事で通行止めになったり、事故で片側交互通行になったりする。人間は道路状況を目で見てリアルタイムの情報を得て、地図情報を適宜補正している。自動走行システムでそれを実現するためには、高精度の地図情報と位置特定機能、そして情報収集機能が必要不可欠だ。

ダイナミックマップは、私が委員を務める内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の自動走行システム推進委員会でも最重要テーマのひとつに設定され、位置参照方式やデータフォーマットなどを検討するための個別の組織も立ち上げ、広く深く議論を進めてきた。自動走行システムの自己位置推定や走行経路特定のみならず、すべての車両のための高度道路交通情報データベースとしても活用することが検討されている。

ダイナミックマップはオールジャパンで

ダイナミックマップはオールジャパンでなければ成しえない。たとえば、資金の問題。日本中の三次元地図を作り上げるだけで莫大な予算が必要なことは簡単に想像ができるだろう。地図の基本骨格など、どの企業が手掛けても大差ないことを、各社がそれぞれに巨費を投じて仕上げることに意味はない。

また、交通規制情報や道路工事情報を共有するにはあらゆる行政機関と連携しなければならない。国道と県道と市道では所管が違うし、行政機関ごとに地図に対する温度差もある。情報の扱い方が違うのも悩ましい。とある県警では今でも道路工事情報を紙資料でしか管理していないという。また、デジタル化していても、行政ごとに申請書類等のフォーマットが違うので、情報共有に向けたルール作りが必須だ。もはや民間企業が1社2社集まって実現できるレベルの話ではない。

それゆえ、SIPでは動的情報までは競争ではなく、協調領域とすべきだと判断し、冒頭に述べたダイナミックマップ基盤企画が設立されるに至ったのである。

自動運転におけるアルゴリズムは「認知・判断・操作」からなる。認知はカメラやレーダーセンサー、判断は人工知能(AI)、操作は油圧や電動モーターなどの技術をそれぞれにひもづける。ダイナミックマップはこのうちの認知を支えるものだ。自車の位置を地図と照合させて推定させ、周辺車両の認識とともに、状況を判断して実際に走行速度を調整したり、ハンドルを切ったりする。

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