米国流の"褒め重視"、ロシア流の"直球勝負" あなたが多国籍チームのリーダーになったら…

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仕事は任せる。だが人間は間違いを起こすものだから、準備を入念にし、ミスが発生しないように重要な仕事は2人の目で確認させるなど、リスクが起こる可能性を最小限にする。こうしたダフィー船長のさりげないリーダーシップで、若田はめきめきと頭角を現していく。

もちろん存在感を示し、上意下達型の指示をする船長もいる。しかし仕事がきちんと進み、成果を出してチームで楽しく仕事ができれば、誰がリーダーであるかはさほど重要ではないと若田は考える。目指すのは例えるなら「透明な清水のような船長」だという。

そのためには1人ひとりとしっかりコミュニケーションをとり、個々のゴールを達成しながら「和の心」でチーム全体の目標を達成したい、と若田は常々語る。そう考える若田にも、大きな課題があった。

日本のエースの、地道な“社内営業”

ISSにはソユーズ宇宙船に乗る3人の宇宙飛行士が数カ月交替で次々と訪れ、メンバーを交代しながら合計6人で仕事を行う。若田はISS第39次チームの船長だ。滞在前半は先に滞在していた第38次チームと、後半は第40次チームと仕事を行う。

日本のエース若田光一飛行士は、地上で地道な”社内営業”をしていた
(出典:NASA)

若田は第38次、第39次チームのコミュニケーションはよく取れていたというが、問題は後から合流する第40次チームだ。米国人1人、ロシア人2人のうち、米国人飛行士とは一緒に宇宙飛行をしたことがあり気心も知れているが、ロシア人2人とは仕事をしたことがないのだ。

「ISSの訓練は、それぞれの飛行士たちが世界各国の訓練所を回って訓練を行うため、全員で一緒に過ごす時間がなかなか取れないのです。だから、ロシア人飛行士とは訓練以外の時間でもスポーツジムで5分ほど、訓練合間の休憩時間中にコーヒーを飲みながらなど、積極的に機会を見つけて訓練状況の情報を交換をし、意思疎通を図るように気を配っています」(若田)

ちょっと待って! チームワークを築き、リーダーシップを鍛えるために、NASAはNOLS訓練を取り入れていたはずだ(連載第2回記事)。訓練にロシア人は参加していないのか?

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