日本のエネルギー問題は「地形」で解ける ダムは先人の犠牲の上に立つ「人工の油田」だ

拡大
縮小
グラハム・ベルは日本のエネルギー資源に気づいていた(写真 :soulman / PIXTA)
水力発電というと、一時代前の開発しつくされた電力源というイメージが強いだろう。確かに、今後、新規の巨大ダムが建設される見込みはなく、水力発電の総発電量に締める割合は10%足らずにすぎない。
しかし、国土交通省で数々のダム建設に携わってきた竹村公太郎氏(元同省河川局長)によると、既存ダムの活用で、新規の巨大電力を生み出すことが可能であるという。既存ダムの潜在能力を発揮させれば、現在の2~3倍の水力発電量を確保することができるというのだ。
資源安で危機感は薄らいでいるものの、歴史的に見ればエネルギー問題がつねに日本の国運を左右してきた。今後は、二酸化炭素削減の必要もあり、化石エネルギーへの依存を見直していかざるを得ない。3.11以来、原発稼動には高いハードルが横たわっている。そうした中、安定したエネルギー源として水力発電量の比率を高めることの意義は大きい。
前回前々回に続き、日本のエネルギー問題解決のカギを握る「純国産」再生エネルギーの隠れた可能性について、『水力発電が日本を救う』を上梓した竹村氏が解説する。

日本のダムは「大油田」

ベストセラー『日本史の謎は「地形」で解ける』の著者が断言。世界にも稀な地形と気象の日本は、既存ダム徹底活用でエネルギー大国になれる!

私は、長年ダムに関わってきた「ダム屋」である。だからだろう、いつも、ダムを見るたびにこう思う。もったいない、と。

ダム屋の目からは、ダムに貯められた雨水は石油に等しいもの、ダム湖は国産の油田のように見える。しかも、このエネルギー資源は、ダム湖に雨が貯まれば貯まるほど増え、まるで魔法のように枯れることがない。この感覚は、ダム屋以外の方にはちょっと理解しがたいかもしれない。

ただし、雨ならば何でも石油と同じわけではない。高い山、大量の雨、そして川をせき止めるダム。この3つがそろったときにだけ、水は石油になる。なかなか、3つの条件はそろわない。ところが、現在の日本には3つがそろっている。この日本に暮らす私たちは非常に幸運なのである。それなのに、前回前々回で述べてきたように、ダムに水を貯めないという現実がある。

もっともっと貯めればいいのに……。日本はエネルギーを求めているのに、このダムに、なぜ、もっと水を貯めないのだ。石油にも等しいエネルギー源となるダム湖の水を、満々とたたえないのか……。それで、私はもったいない、と嘆いてしまうのだ。

次ページ日本のエネルギー資源に気づいていた
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT