草食系マッキンゼーが営む、面白い不動産屋 新世代リーダー 林 厚見 不動産プロデューサー

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またあるとき、映画プロデューサーの人が書いた本を読んでいたら「僕は俳優にはなれない。ディレクターにもなれない。だからプロデューサーになった」という一文があって、すごく共感しました。彼は、ディレクターや俳優のパーティーに行ってもなんだか入り込めないのだと言う。かといって、配給権の売買をしている人たちのパーティーに行ってもしっくりこない。プロデューサーこそが自分の適職だと感じた、というくだりを読み、「自分もまったく同じだ」と思いました。

僕もおカネの世界だけではつまらない。一方、建築家のコミュニティに行けば彼らとの違いを感じる。でも僕は、「この場所にどんな場所と空間をつくれば、どんな人たちが集まって、街がどう変わるか」みたいな話をしながら、お金を集め、人のキャスティングをするのが面白い。「自分はプロデューサーなりたい」ということが改めてわかったのです。

自分でやりたいことをするなら会社をつくるしかない

帰国後は、スペースデザインという会社に入りました。これはリクルート創業者の江副浩正さん(今年2月に逝去)がプライベートで作っていた会社で、僕の志向していたブティック型のデベロッパーに近かった。面接のとき、「この会社をこれからこうするよ」というビジョンを10ページくらいのテキストにしたものを渡されたのですが、それを読むとずっと自分の考えていたことが書かれていて衝撃を受け、給料も聞かずにすぐ入社を決めました。

それからしばらくは、不動産業者の「おっちゃんたち」と銀座で飲んだり、銀行相手に接待ゴルフをしたり、営業の現場も経理もプロジェクトの細かい進捗管理も、江副さんのそばで経験しました。当時の江副さんは引退したかのように見えていましたが、やっぱり意思決定はダイナミックで、かつ全然ロジカルじゃなく、直観的。本当に勉強になりました。

江副さんの持っていたゲストハウスが赤坂にあって、そこで「勉強会をやらせてください」などと言って、友達や女の子を100人くらい呼んで、何百万円もするグランドピアノの上をDJブースにして騒いで遊んでいたこともありましたね(笑)。昔は歴代の首相クラスの方々も来ていたようなところですが。

――いまのビジネスパートナーの吉里裕也さんとは、江副さんのスペースデザインで出会った。

 そうです。僕は29歳で入りましたが、彼は新卒で入社し、僕より1年早く辞めて、退社後はフリーでプランナーをやっていました。そのころ僕も江副さんの会社を辞めようかどうしようか迷っていたのですが、別に大きなバックボーンを持っているわけでもない吉里が、1人で頑張っているのを見た。「自分がやりたいことが100%できそうな会社はない以上、自分の会社をつくるしかない」と思って、彼と一緒に不動産の企画会社を設立することにしたんです。

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