草食系マッキンゼーが営む、面白い不動産屋 新世代リーダー 林 厚見 不動産プロデューサー

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――才能がなかったとはとても思えませんが、つまりA・ガウディ(スペイン)のような天才でないと、さとった。

これは前向きな話ですから、全然いいんです。でも建築は好きだから、やるだけやってみようと、大学院まで打ち込みました。ただ自分はアーティストにはなれないというコンプレックスはいまでも抱えています。

そこで、仕方がないから自分なりの道も探っていくうちに、「デザインの世界とリアルな現実社会とのあいだで動くプロデューサー」みたいなイメージが出てきた。でも職業として成立するのかどうか、そのときはまだわかりませんでした。

普通とは「別の道」から入って、街を変える

――大学卒業後、なぜコンサルのマッキンゼーに就職を?

建築の勉強中に、経済にも興味を持ち始めたからです。きっかけは、「なんでこんなにつまらないマンションだの、味気ないビルばかり増えていくんだろう」という、建築学科の学生らしい疑問でした。きっと現実社会の構造に何か原因があるんだろう。それなら資本主義構造というものを、ちゃんと理解してやろうと思った。

そこで日経新聞や、大前研一さんの本を読み始めたら、けっこう面白くて。大前研一さんがいたマッキンゼー(・アンド・カンパニー)という会社を知った。「ここは勉強になりそうだ」と思い、「俺は別の道で街を変える」というスタンスで、マッキンゼーに入社しました。以上が25歳までのざっくりした経歴です。

――その後、退社して、コロンビア大学に留学するわけですね。

マッキンゼーを3年半くらいで辞めて、コロンビア大学の不動産開発科に入りました。それというのも会社に入って1年目、ロサンゼルス出張で、あるデザインホテルに泊まったのですが、そこに足を踏み入れた瞬間、あまりにも感動してしまった。暗がりにキャンドルが何百本と並び音楽がガンガン流れるクラブのような空間にハリウッドの人たちやスポーツ選手やアーティストなどがすごい密度で集まっているのです。そういうホテルは当時まだ珍しく、あのとき以上に人生に影響を与えるわくわくを感じたことはありません。そのとき、「やっぱり自分は空間をつくる世界で生きていくんだ」と決めました。

コロンビア大学を選んだのは、ニューヨークに住んでみたかったからです。20歳のとき初めてニューヨークに行って、一生に一度はこの街に住もうと決めていたので、それを実現させたかった。それからたまたまコロンビア大学の建築大学院に不動産開発科という、ややマイナーなコースがあったので、ちょうどよかった。

「プロデューサー」が天職だと悟った

日本でデベロッパーというと、三井不動産のような会社を想像しますが、向こうではもっとプロデューサー的な感覚の職業です。投資銀行や保険会社から資金を調達して、土地を見つけて企画を立て、ゼネコンや建築家を見つけて開発するという仕掛け人なんです。「アイ・アム・ア・デベロッパー」であって、「アイ・アム・ワーキング・フォー・デベロッパー」ではない。そこが面白いと思った。

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