スズキ「ワゴンR」はなぜここまで凋落したか かつての絶対王者も抗えない市場の変化

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ワゴンRという車名も、ワゴンに近いパッケージングゆえだ。最後のRはレボリューショナリー、リラグゼーションという意味を持たせたとされるが、鈴木修会長は自身の著書で、「セダンもある、ワゴンもあ〜る」という語呂の良さから採用したと記している。

ツール感覚の造形

もうひとつ、ワゴンRの人気を不動のものとした理由として、デザインの要素は外せない。

スズキは以前から、機能重視のシンプルでスマートなデザインを得意としていた。1979年発表の初代アルト、1988年発表の初代エスクードなどが好例だ。しかもワゴンRは、近年の軽乗用車としては珍しく男性ユーザー向けとして開発された。よってツール感覚の造形が施された。それが老若男女を問わず幅広く受け入れられた。

ワゴンRが登場した時、日本はバブル崩壊直後で、庶民の懐具合は厳しかった。しかし軽自動車へのダウンサイジングは、まだプライドが許さなかった。そこへツールっぽいデザインのワゴンRが登場した。男性が乗っても恥ずかしくない軽乗用車の登場。時代が求めたクルマでもあったのだ。

しかしその後、軽自動車へのダウンサイジングを引け目に感じない人が増えると、上級車種に匹敵する広さを求める層が多くなった。そこへ登場したのがタントやN-BOXであり、ワゴンRから主役の座を奪っていった。
もうひとつ、ワゴンRの流れを発展させた、ツール感覚の軽乗用車が身内から登場したことも大きい。2013年に発表されたハスラーだ。

ハスラーのオーナーは軽乗用車としては男性比率が高い

ハスラーのプラットフォームやパワートレインはワゴンRと共通だ。シートアレンジもワゴンRと同じ。一方で初代が提示した遊びの道具としてのキャラクターは、さらに強調された。その気持ちがユーザーにも伝わっているのか、ハスラーのオーナーは軽乗用車としては男性比率が高いようだ。ワゴンRを求めるようなユーザーが流れたとも考えられる。

次ページコンセプトを変えずに地道に進化する「ワゴンR」
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