大暴落に備えて個人投資家が身を守る方法 オルタナティブ投資の活用を考える

拡大
縮小

だが、実際に起こることは教科書とは異なっている。リスクオフになると株価も下落するうえ、ドル円もドスンと落ちて円高になり、ダブルで損失を被る。実質的には二重のリスクを取っているようなものだ。たまたま、昨年までのアベノミクス相場では、円安と株高が同時進行したから、為替オープンはうまく機能したのだが、今後は疑問だ。

さらにいえば、一部の極論で、「日本の財政破綻で『日本売り』になれば円は暴落する、外貨に逃げておいたほうがよい」というのが、プライベートバンカーや販売会社のセールストークにある。だが、本当にそうか。新興国であれば、外貨がひっ迫するのでそうなるが、日本やスイスのような対外黒字国で対外純資産の額が大きい国というのは、えてして逆の動きになる。リスクオフ的になって資金が国内回帰して、逆に円高になる。

グローバル分散投資理論の落とし穴

グローバル分散投資の理論は、第二次世界大戦後に米国で作られたものだ。ドルを持つ人々のグローバル分散投資の教科書にそう書いてあるから、「当然そうだよね」と考えるのは危険だ。基軸通貨国の特権で、米国は、将来どんなにドルが安くなっていくとしても、結局、ファンディングできる。それが米国経済の強さの源泉になっている。歴史的に見れば円やスイスフラン、かつてのドイツマルクを持っている人の為替差損の累積の山の見返りとして彼らは基軸通貨の恩恵を享受してきた。

当社のファンドでは、原則として為替はヘッジしている。そのことによって、今年の2度のリスクオフ相場でも為替差損は免れ、むしろリバランス効果も一部享受した。感覚的にいえば、ヘッジしていないバランス型投信が月間で10%ぐらい上下するときに、2~3%ぐらいしか動かないような設計を目指しており、今年は格好のストレステストになっている。
 

山内 英貴 GCIアセット・マネジメントCEO

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまうち ひでき

やまうち ひでき 1963年生まれ。日本興業銀行でトレーディング・デリバティブ関連業務に従事した後、2000年4月に独立し、ヘッジファンド運用に特化した資産運用会社グローバル・サイバー・インベストメント(現GCIアセット・マネジメント)設立。2007年4月より東京大学経済学部非常勤講師。主な著訳書に『LTCM伝説』(共訳:東洋経済新報社、2001年)、『オルタナティブ投資入門(第3版)』(東洋経済新報社、2013年)がある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT