バッテリーはどこまで進化できるか? EVの性能向上・低価格化のカギを握る

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次の電極材料候補は、負極ではスズやシリコン、正極では硫黄だ。材料ごとに乗り越えるべき課題は異なる。たとえばシリコンは劣化が早く、寿命がわずか充放電100回程度と短いのが難点だった。しかし、逢坂教授の研究室ではこのほど、約7000回の充放電ができるシリコン系の負極材料の開発に成功。新しい電極材料の実用化に向け、一歩前進した。電池の容量不足が解消してEVの普及が進めば、肝心のコストも量産効果で目標値まで下げられるかもしれない。

オールジャパンで”蓄電立国”目指す

一方、NEDOが30年以降の目標として掲げるエネルギー密度は、現状の7倍の700Wh/kg、コストは10分の1。リチウムイオン電池をいくら改良・量産しても実現不可能で、新しい次世代電池を生み出すブレークスルーが必要な数字だ。

この壮大な夢のため、NEDOが09年に立ち上げたのが、革新型蓄電池先端科学基礎研究(RISING)事業。京都大学など16の大学・研究機関とGSユアサ、日産自動車など13の企業が名を連ねるオールジャパン体制で、次世代電池の実用化と“蓄電立国日本”の強化を目指す。

同事業の一環で、昨年国内に世界に先駆けた最先端の研究設備が作られた。X線や中性子線を電池に照射し、内部の反応をつぶさに解析するための大型施設だ。今後、多価カチオン電池など次世代電池の開発への活用を見込む。

日本は民生用のリチウムイオン電池では韓国勢に押されているが、車載用ではいまだ高シェア。EVの進化は、日本の電池の開発力に懸かっている。

(週刊東洋経済2013年2月16日号)(撮影:尾形文繁)

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