今は踊り場、為替は90円台の円高に向かう 米FRBの次の一手が「利下げ」になるとき

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それでも半年で20円超も円高になったのだからそろそろ反転し円安になるのではないかという意見をいただくこともある。正直、その気持ちは分かる。円高を見通す筆者から見ても、年初からの動きは「過度な変動」と感じられ、果たしてここから一段の円高があるのか、不安もある。しかし、今年の高値・安値の値幅(約22.7円)が過去に類を見ないほど大きいわけでもない。

単純に値幅だけで比べた場合、これより動いた年は過去10年で3回(1998年、1999年、2008年)ある。いずれも金融危機や史上初のゼロ金利導入など歴史的な動きがあった年である。この点、今年は、Brexitという戦後秩序の変化を示唆する大事件が勃発しており、大きな値幅を伴うこと自体に違和感はない。

もしくは、値幅よりも変化率の方が現実的な尺度だろうか。この点、今次円高局面の始点が125円であるとした場合、105円前後ならば、15%程度の下落率となる。しかし、過去の円高の「波」では平均33%程度、変動してきた経緯がある。むろん、こうした変動が単年で達成される必要はないし、しょせんはプラザ合意後の極端な動きを含めての平均であるため、幅を持って見ることを推奨したいが、例えば125円から33%は83~84円となる(そうなると言っているわけではない)。

変動相場制の波は平均3~4年続く

さらに言えば、過去30年で「円高の年」は17回あるが、上半期(1~6月)にドル円相場が最安値(円の最高値)をつけたことは1度もない。この点、今年は6月24日の99.00円がドル円相場の最安値であり、「円高の年」として上半期に初めて最安値をつけるかどうかは密かに注目したいところではある。だが、経験に従えば、まだ「底」を警戒したい気持ちになる。

また、歴史的には、円高も円安も、いったん始まった「波」は平均3~4年は続くことが多かった。2015年まで4年間続いた円安相場は2015年6月10日に記録した125.86円を境にピークアウトしている(ちなみに同日は黒田日銀総裁が「実質実効為替相場で見ればこれ以上円安になりそうもない」と発言し、ドル円相場が急落した日だ)。だとすれば、足元の円高局面は、まだ約1年しか続いていない。

以上のような視点はあくまで単なる手掛かりである。現段階で80円台の話をするのは流石に性急過ぎるし、今回の円高が過去のように3~4年続くとの保証もない。だが、フェアバリューのない為替の世界において、手掛かりは少しでも多いほうがよいし、その手掛かりが経験則によるものであれば、なおのこと、気にかける価値はある。

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