生活が大きく変わる 海外ツアー本格参戦

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晴れた冬の空はすっきり澄んで、街の景色や富士山も新鮮に映ります。さて、今年は新たに米国ツアーに参戦する日本人選手がいます。石川遼さん、有村千恵さん、上原彩子さんです。すでに活躍している宮里藍さん、上田桃子さん、宮里美香さんも含め日本人選手の活躍が待ち遠しいです。

海外ツアーに本格参戦となると、ツアー生活と日常生活ががらりと変化します。まずツアー生活。各国のツアーごとに仕組みが違うので、選手に対する試合の規則や決め事が変わります。試合日数も女子の場合、日本では3日間の試合が75%を占めますが、米国では4日間の試合が82%になります。また、日本なら毎週自宅に帰れますが、米国は3~5週間連戦するので家に戻れません。その分試合先で過ごす時間が多くなり、練習日やプロアマ大会の方法が違い、サマータイムがあるので試合のスタート時間帯の取り方が日本より長くなります。その分出場人数も多いです。

さらに、国土が広いので移動距離が長い。ほとんどの試合に飛行機とレンタカーで移動します。国内時差があるので、体内時計の調整も必要です。さらなる体力強化と国内時差を克服し、いいプレーを続けるためのスケジュール管理もシビアな問題として迫ってきます。ゴルフ場も国土が広い分、日本より多様性に富んでいます。芝質も違うので、その芝に合った打ち方をショットからパターまで習得しなければなりません。

そのうえ、米国ツアーは男女とも世界一競争の激しいツアー、これまでに経験のない厳しい競争にさらされます。同じゴルフをするのに、新しいツアーのパターンに慣れ、自分のものにしていかなければなりません。ですから行ってすぐは、たまに海外の試合に出ていた頃には気にも留めなかった、諸々の違いを深刻に感じてしまいます。

ゴルフだけでもこんなにやることが増えるのに、日常生活そのものも激変します。それは住む環境であり、言葉であり、文化です。住む家の環境は大事ですし、言葉が通じないと自由に行動できないうえに、気晴らしもままなりません。数週間の遠征ならあまり必要性を感じなかったツアー仲間との交流は、自分が気持ちよく過ごし、実力を発揮するために欠かせないことです。またいろんな情報を知ることで、身の安全を図れます。そして、住む国の文化を理解することもとても重要です。どうしてこういう言葉の使い方なのか、こういうことをしてはいけないのか、などを知れば生活の知恵になるし、より相手を理解できます。

これは日本ツアーにいる外国人選手にも同じことがいえます。海外ツアーに本格参戦するということは、単にゴルフを海外でプレーするということではなく、生活そのものが大きく変化することであり、それに伴いさまざまな対応力が試されます。それぞれのやり方で前に進み、海外での活躍を大いに期待しています。 

小林 浩美 プロゴルファー

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こばやし ひろみ

1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長。所属/日立グループ。

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