首都圏の鉄道、利用者増加駅50・減少駅50 再開発で意外な駅が上位に

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だが、全体的な傾向としてはやはり都市部よりも、都心から一定程度離れた地域で利用者の減少が進んでいるようだ。都心部と郊外を結ぶ大手私鉄各社の駅乗車人員増減率を見ると、都心部で増加が進む一方、郊外では減少しつつある傾向が色濃く見えてくる。

例えば京急電鉄の例を見るとその傾向が明らかだ。京急全線で期間内乗降人員が減少した駅は全73駅中の32駅だが、この32駅のうち泉岳寺〜横浜間にある駅は京急新子安・花月園前・産業道路・子安・天空橋・神奈川の6駅のみで、その他は全てターミナルの品川から約30km離れた横浜以南の各駅だ。

減るのは都心から30km以遠?

同様の傾向は東武鉄道や京成電鉄にも見られる。東武は1都4県の126駅中、乗車人員が減少したのは45駅。このうち東上線の駅は13駅だが、その中の9駅はターミナルの池袋から約30km離れた川越よりも先に位置している。伊勢崎線も同様に、減少した11駅中の6駅がターミナルの浅草から約35km離れた春日部以遠の駅だ。

京成線も、乗車人員が減った24駅のうち14駅がターミナルの京成上野駅から約25km離れた京成船橋以遠にある。このほか、乗車人員が減少した駅数が全70駅中14駅と少ない小田急電鉄でも、14駅中11駅が新宿から約30km離れた町田以遠の駅となっているなど、郊外の駅で乗車人員が減少に転じつつある傾向が現れている。

その中で、やや様相が異なるのが西武鉄道。同社の場合は減少した32駅中の約4割にあたる13駅を新宿線の駅が占める。同線は関東の大手私鉄主要路線で唯一地下鉄など他線との乗り入れがないほか、連続立体交差化や複々線化、東京メトロ副都心線との乗り入れなど、近年変化が相次いだ池袋線と比べて新たな施策に乏しかったことは否めない。同線も一部区間で立体交差化工事が行われているが、今後何らかの活性化策などが行われるかどうかが注目される。

人口減少・少子高齢化社会へと突入した日本。東京圏への人口集中は続いているが、駅の乗車人員増減率を見ると増加は都心部に集中し、ターミナルから離れた郊外の駅は、再開発が行われたエリアなどを除けば減少傾向にある路線が多いことが浮かび上がってくる。沿線に利用者をつなぎ止め、「選ばれる沿線」になるための施策が問われる時代は、すでに始まっている。

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