治安も最悪、リオのテロ対策に残る「懸念」 オリンピック直前に非常事態宣言も

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被害にこそあっていないが、大統領デモに集まった人々の写真を撮っているときも、路上カーニバルで踊っている人々を撮っているときも、女性に危うくレンズを盗られそうになった。カバンをまさぐられスリだと気付いても、人混みにさっと紛れ込まれ捕まえきれなかった。ブラジルの場合、スリなどの軽犯罪はたいてい釈放されるのでタチが悪い。恨みをかって仕返しされることもあるらしいので気を付けなければならない。

日本人の旅行者はカメラを何も入れずにそのまま持ち歩く人が多く、スリの注意を引きやすい。必ずカバンに入れるように心がけたい。人が多いイベントなどに行くときは、少しのおカネと身分証明書のコピー以外極力モノを持たないで行くのがベストだ。

レンズを盗まれてからは、信号待ちでも後ろを注意するようになったし、写真を撮るときも周囲を見回し安全を確認するようになった。怪しげな奴がいるときはシャッターチャンスに出合っても撮らない。つくづく写真が撮りづらい社会になったと思う。

「リオでの五輪観戦は命を危険にさらすようなもの」

街中で、拳銃を所持する強盗犯に遭遇することもしばしばある。強盗に遭遇したら、彼らが未成年だろうと決して反抗しないことだ。麻薬を吸引している場合はためらうことなしに引き金を引くことも考えられる。最近は1発ではなく、数発撃って相手を死傷させる手口も増えている。少々腕に自信があっても逆らうのは絶対止めたほうが良い。

元サッカーブラジル代表のリバウド氏がリオ五輪観戦でブラジルに行くことは「命を危険にさらすようなものだ」というような発言を自身のインスタグラムに投稿した。衝撃的過ぎて大げさに感じる人もいたかもしれないが、今のリオを見ていると、そう言いたくなるのもうなずける。最悪の治安、ジカ熱そして手抜き工事の可能性の高い施設など、住んでいる私から見ても問題は山積している。

コパカバーナなど観光客向けホテルが多く並ぶ地区に滞在し、車で主な観光地やオリンピック会場を往復する程度ならば、普段以上に安全なリオを満喫できるかもしれない。もちろんそれには、普段の数倍以上おカネがかかることは覚悟しなければならないが。

楮佐古 晶章 フォトジャーナリスト(在ブラジル)

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かじさこ あきのり

フォトジャーナリスト。北海道大学農学部卒業。JICA(国際協力機構)の開発青年で渡伯して、気が付けばブラジルに住み着いて20年以上。TV特派員の助手、邦字雑誌などの仕事を経てフリーに。サンパウロのセントロにある築60年以上の古いアパートに住み、毎日、街を撮影しながら徘徊している。

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