ドル高円安は、まだ続く可能性も 市場動向を読む(為替)

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米ドル/円相場が長期的に見ると、円高に動いているのは、日本の物価上昇率が米国の物価上昇率をほぼ恒常的に下回っているからである。日本の物価上昇率はほとんどの貿易相手国の物価上昇率を恒常的に下回っているため、円相場は全体的に長期的に見ると円高傾向を示している。従って、『名目実効レート』も長期的には上昇(円高)方向に推移している。

ごくまれに、円の名目実効レートの長期トレンドを示して、円は恒常的に上昇していてかなり割高になっているなどという解説を目にするが、これは『日本の物価上昇率は他国の物価上昇率を恒常的に下回っている』と言っているにすぎない。ちなみに、長期の分析をする時には物価変動の影響を除いた『実質実効レート』を、短期の分析をする時には物価変動の影響を除いていない『名目実効レート』を用いる。

長期的には円の割安感は修正される

さて、それではなぜ円の実質実効レートは急速に下落し、円がかなり割安になっていることを示しているのだろうか。それは、ここ3カ月の円相場は期待インフレ率の上昇により下落しているためではないかと考えられる。つまり、日銀が2%のインフレターゲットを導入したことにより、市場は日本のインフレ率がある程度上昇することを織り込んで、円は下落していると考えられる。

しかし、実際のインフレ率はまだ上昇していない。インフレ率がまだ上昇していないのに急速に円が下落しているので、実効レートでは割安となっているということを示しているのである。

つまり、長期的に見ると、日本のインフレ率が今後上昇しなければ、円は買い戻されて割安感が修正されることになる。逆に日本のインフレ率が上昇するようだと、実質実効レートが反転上昇することにより実際の円相場が動かなくても、円の割安感は修正されることになる。

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