“経団連代表"の住友化学、借金返済に軸足 大型投資回収に遅れ、次期3カ年中計で立て直し

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住友化学は2月1日、今期業績の着地となる13年3月期見通しを下方修正した。新しい売上高見通しは前期比1%増の1兆9700億円と従来から500億円引き下げ、ほぼ横ばいにとどまるが、営業利益計画については同17%減の500億円と従来から150億円下げ、前期から後退を強いられる。売上高は10年前の倍近くになっているのに、利益はほとんど伸びていない。

業績低迷を招いた2つの誤算

背景には2つの誤算がある。一つは世界経済の変調とそれに伴う円高である。リーマンショック、欧州債務問題と市場環境が悪化する要因が立て続き、歴史的な水準まで円高が進行。需要の低迷とともに、1ドル当たりの為替感応度が40億円近くあった住友化学の収益を直撃した。

住友化学がサウジアラビアで展開する石油化学コンビナート「ペトロ・ラービグ」

もう一つは、社運を懸けて取り組み、09年から稼働しているサウジ計画の収益化が遅れていることだ。サウジ計画の魅力は、コスト競争力の高さだ。エチレンの原料には、世界で最も安いとされる天然ガスのエタンを用いる。ナフサ(粗製ガソリン)を使う日本の石化製品と比べると、原料コストは25分の1~30分の1に収まるという。

ところが、これまでは誤算が続いている。当初は折半出資で設立した合弁会社だったが、サウジ側の要請で出資比率を抑えられ、決算上、持ち分法投資利益としてしか取り込めなくなった。建設費も倍以上に膨張。そのうえ、初期段階から現地作業員の習熟に時間がかかり、設備トラブルも続き、安定操業がおぼつかなかった。欧州債務問題を発端にした市況低迷も響き、持ち分法投資利益を見ると、直近12年3月期はわずか5億円強にとどまっている。

1970年代にシンガポールで石化プラントを設けた「成功体験から垂直立ち上げを急いだが、(慣れない)中東でのビジネスということもあり、当初は高稼働が実現できなかった。ようやく稼働が安定してきたと思ったら、(世界経済の減速を背景とした石化・合繊原料市況の低迷により)マージンが悪化した」(十倉社長)。

住友化学は次期中計の最終年度となる15年度に、売上高2兆4000億円(12年度会社見通し比21%増)、営業利益1400億円(同2.8倍)を目指す。意欲的な目標だが、実は事業拡大よりも軸足を置くのは傷んだ財務基盤の健全化、つまり“借金の返済”だろう。

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