シェール革命で世界はどう変わるか【下】 中部電力、大阪ガスの輸入戦略を直撃

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調達先の多様化で売り主との交渉力高める

そこで大阪ガスは、コストを固めるため、自ら上流権益を取得して原料のガスも押さえようとしている。昨年6月、米国テキサス州のピアソール・シェールガス・オイル開発プロジェクトに参画するため、米キャボット社の上流権益を一部取得(35%)したのはその一環。上流権益は原料価格上昇のヘッジ機能を果たし、最終的なLNG調達コストを長期安定化できる。

キャボット社の上流資源は、足元の経済性を考えて、現在はオイルリッチな地層を開発しており、まだ井戸は4本程度と初期段階。今後は年間20本前後掘っていくという。「これに満足することなく、さらなる権益取得も考えている」(山本社長)という。

液化コストについては守秘義務上、明らかにされていないが、日本までの輸送を含めた現状の輸入コスト全体について、今の米国天然ガス価格(ヘンリーハブ)を前提とすれば、「15ドル(100万英国熱量単位)よりは低い」(山本社長)という。

年間220万トンという輸入規模は、現在の大阪ガスの年間調達量全体である約800万トンの4分の1程度。輸入開始も17年からで、すぐに絶大な効果が期待できるというわけではない。むしろ、「調達のポートフォリオの多様化に寄与し、これまでの売り主との交渉材料になる」(山本社長)ことに効果の重点を置いているという。

中部電力は「目に見えないコスト下げる」

一方、中部電力では、フリーポート社のプロジェクトに参画する意義について、(1)米国という新たなLNG調達先の開発、(2)米国のガス価格指標に連動した新たなLNG価格体系の導入、(3)LNGユーザー同士が協調してLNG生産者になること、の3つを挙げる。

中部電力の佐藤裕紀・燃料部部長・LNGグループ長は、米国からのシェールガス輸入の意義について、次のように説明する。「LNG市場が拡大・成熟する中で、日本のLNG輸入契約で昔ながらの原油価格連動を続ける必然性は低下した。また、原油市場には投機マネーが流入して、ファンダメンタルズを必ずしも反映しない高値となり、アジア向けLNGだけが不条理に高い価格までハネ上がっている。米国のガス市場に連動したLNGを輸入できれば、将来の価格は保証できないとはいえ、少なくとも価格指標を多様化できる」。

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