成功する人は「無益な感情」を捨てている 2000年前に「老子」が指摘した真実

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第二は、謙虚さです。水がないと地球上の生物は生存できません。大きい働きをしておりながら、自分はと言うと、低い所、低い所へと流れていきます。低い所というのは誰でも嫌がる所だが、水はあえて人の嫌がる低い所に身を置こうとする謙虚さを持っているのです。

柔軟性と謙虚さ、この二つを学べ、と『老子』は言うのです。

まず柔軟性ですが、変化の激しい時代にあっては、特に必要な資質であることは言うまでもありません。思考にしても、固定観念にしばられていたのでは、時代の動きにとり残されていくばかりです。人間関係にしても今までのメンツにとらわれていたのでは、機敏な対応ができなくなります。頭はつねに柔軟にしておかなければならないのです。

これで思い出されるのが、旧日本海軍の失敗です。かつて米国と戦ったとき、緒戦の真珠湾で快勝したものの、ミッドウェーで大敗を喫し、以後、退勢を挽回できないまま壊滅しました。なぜそんな惨敗を喫したのか。原因のひとつは、硬直した人事にあったと言われています。

緒戦に敗れた米国は、いち早く無能な司令官を辞めさせ、若手を起用して態勢の立て直しを図りました。これに対し日本海軍は、最後まで年功序列型の平時の人事にこだわり続け、その結果、若手の有能な指揮官を無駄死にさせてしまったのです。

現代の企業も、生き残りをはかろうとするなら、同じ失敗を繰り返してはならないと思えてなりません。

信頼されるリーダーはみな謙虚

さて、2番目の謙虚さですが、これまたいくら強調しても強調しすぎることはないでしょう。特に能力や功績のある人、地位の高い人ほどこれが望まれます。

なぜかと言えば、逆のことを考えてみればよいのです。謙虚の反対が傲慢。これは、どこの組織、どこの社会であろうと、必ずまわりの反発を買います。その人が落ち目になったとたん、そういう反発が表に吹き出してきて、寄ってたかって足を引っ張られることになりかねません。

企業社会を見ていると、どこの企業にも、40歳くらいで自他ともにやり手だと認められている人物がいます。まわりからも期待され、本人もその気になっているのですが、多くは途中で挫折して、大成していく人は意外に少ないように思われます。それは他でもない、謙虚さに欠けているからではないでしょうか。

謙虚であってこそ、初めてまわりの信頼も得られるのです。

もちろん、柔軟であれ、謙虚であれと言っても、これだけを一面的に強調すると、かえってマイナスの面が出てくることにも留意する必要があります。

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