壮大な「夏の株高」の可能性が高まってきた 「円高トレンド」は転換、中国危機も当面封印

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となれば、文句なく株式投資の魅力度が高まるはずなのに、株式市場は波乱気味、特に日本株式は著しく低迷し、異常な乱高下を繰り返し、鉄火場の色彩を強め、多くの投資家の足を遠のかせてきた。しかし転機が来たようである。

否定しがたい米国経済の堅調さ

米国経済の堅調さは否定しがたい。5月の雇用統計は非農業部門の雇用数の増加が3.9万人と期待外れであったために市場に失望が広がったが、完全雇用の下での求人難が雇用停滞の原因、むしろ労働需給ひっ迫から賃金上昇圧力が強まっている。6月の雇用好調でそれは証明された。

サービス関連の消費と住宅も堅調で所得、需要、生産、雇用の好循環が機能している。次期大統領候補はいずれも財政政策による景気刺激を主張しており、財政赤字対GDP比2%台と健全化した財政が新たなけん引役になるだろう。それはドル高要因である。近い将来、米国がリセッション(2四半期連続のマイナス成長)に陥る公算は小さい。

日本経済も徐々に力強さを増すだろう。(1)消費増税先送り、財政拡大、(2)更なる金融緩和、(3)円高にもかかわらず堅調な企業収益、(4)実質賃金の上昇などが重なる。低迷してきた消費は上向く場面に入るだろう。マイナス金利は余剰貯蓄を、株式・不動産を押し出す。不動産サイクルも空き室率低下⇒賃料上昇が作動するスイートスポットに入っている。

中国危機の深化というシナリオは否定しがたい。だが、当面は景気てこ入れ策で堅調、9月4~5日のG20サミットまでは、危機封印とみてよい。米国経済の堅調さに加えて中国経済と元不安が棚上げされ、円高・リスクオフの圧力が大きく軽減した。過剰悲観の修正高の可能性が強まっている。

もともと「リーマンショック再来」の可能性はごく小さかった。市場参加者の大半をとらえていた「ブラックスワン襲来シナリオ」が否定されたとなれば、来るべきサマーラリーは相当な規模になり得る、と考えるべきではないか。

武者 陵司 武者リサーチ 代表

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むしゃ りょうじ / Ryouji Musha

むしゃ りょうじ 大和証券を経て、ドイツ証券入社。2005年5月ドイツ証券副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザー。2009年7月に株式会社武者リサーチ設立。現在、武者リサーチ代表。ドイツ証券アドバイザー、ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社アドバイザー。武者陵司氏が手掛けるプレミアム・投資Salon「Deep in Mind」は、強気派ストラテジストのバイブルとして高い評価を得る。

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