東京には勝てない。だから「らしさ」を尖らせる スナックみたいなギター教室って?

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他人との距離をズケズケと縮めようとするのも愛知の特徴だと思います。東京人がオートロックマンションだとしたら、愛知人は縁側のある庭付きの一軒家。他人が土足で踏み込めるスペースが確保されている、と信じている。

知らない人同士が出会うと、この「縁側」である共通点を何とか探そうとします。特に好きなのが中学校名。「お前、塩津中なの?じゃ、2コ上の鈴木を知っとる?」みたいな。無理やりにでも共通点を作って「敵じゃない」とアピールをしようとする。昔はこれがすごく嫌だったけど、今は自分もガンガンやってます(笑)。

――僕は東村山三中(東京・東村山市)卒ですけど、共通の知り合いはいませんよね……。好きな飲食店でもいいのでしょうか。蒲郡だと「とり朝」という焼鳥屋が大好きです。

ああ、「とり朝」は僕もよく行きます。いい店ですよね。はい、これで僕と大宮さんは敵ではありません(笑)。

――最初から愛知でギター教室をやるつもりだったのですか。

いえ。成り行きです。トヨタ系の工場で期間社員をしながらおカネを貯めて、今度はニューヨークに行きたいと思っていたんです。その頃に地元の知り合いから「ギターを教えてよ」と頼まれて、その人数が少しずつ増えていって自然発生的に教室ができました。2004年のことです。「求められるのはいいことだな。やりがいがあるなあ」と思って、とりあえず3年間だけやってみようと。

蒲郡市の全世帯5万戸にポスティング

――生徒を集めるための営業活動はされていますか。

現在はホームページだけです。教室を始めた頃は、新聞の折り込みチラシの広告枠を3回ぐらい買いました。でも、まったく効果なし。暇だったので、今度はチラシを自作して蒲郡市の全世帯にポスティングすることにしました。5万戸ぐらいだったかな? 生徒さんにも手伝ってもらいましたよ。それは効果があり、徐々に生徒数が増えてきました。

近隣のライバル教室もネットなどで調べましたよ。でも、「毎日5時間練習してうまくなるぞ」みたいな閉じた雰囲気の教室ばかりで、(生徒の目線で見て)そそられませんでした。もっと娯楽として楽しくやれて、ギターを通して友だちができる教室があってもいいんじゃないかと思っています。

――清水さんは演奏家としても活動していますよね。

自分のことをプレーヤーだとは思っていません。思っているのならここ(愛知県)にいちゃダメですよ。ギター演奏のニーズはほとんどありません。

僕はプレーヤーよりも教室でウダウダ言いながら教えているほうが向いています。(「スロース」という)お店も含めて、自分の好きなことでみんなに喜んでもらえる。忙しくても嫌だと思ったことは一度もありません。医療機器の営業をやっているときは、田舎の体育会系のノリについていけなくて毎日「死にたい」と思っていたけれど……。

次ページどうやって小さな町を拠点に食べていくか。
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