大企業を動かす若手社員の“想い”の力 弱小NPOが大企業と付き合える秘訣

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ベネッセ――転機となった社内講演会

彼女たちから喜々としたメールが届いたのは、それから数カ月後のことだった。メールには、社内でも指折りの優秀な先輩社員に応援してもらえることになったとあった。そして、その先輩社員との作戦会議を繰り返した結果、まずは社内でイベントを開くことになったという。

その方針が決まってからの彼女たちの勢いは凄まじかった。さらに仲間を増やして、あっという間に僕の社内講演会を開くという企画を実現させてしまった。

迎えた講演会当日、いったいどれだけの人が来てくれるのか不安になりながら会場に着くと、平日の夕方にもかかわらず、若手だけでなく、中堅の社員さんから部長職の方まで、幅広い年次の50人を超す社員の方々が集まっていた。

ベネッセで開催した社内講演会の様子

感激した僕は最大限に気合いを込めたプレゼンをしたものの、その日最も熱気を帯びたのは、講演後に実施された参加者によるグループディスカッションだった。発起人である2人が問題提起をしたうえで、「ベネッセで実現したいことを出し合いましょう」とテーマを投げかけると、会場は一気にヒートアップした。

特に若い世代からは「私たちはもっと挑戦がしたい」「この会社に入ったことの意義を感じられるような仕事がしたい」といった発言が次々に飛び出し、これには中堅以上の社員が圧倒されていたほどだった。当日参加していた人事部の方は、「うちの若手社員は元気がないと誤解していた。まさかあんな情熱を持っていたなんて……。」と、驚きを隠し切れない様子だった。

こうして大きな盛り上がりを見せて終了した講演会は、人事部を中心にちょっとしたニュースになった。そして、社内でかねてから検討されていた若手グローバル人材育成の一つの手段として、凄まじいスピードで留職の導入が決定したのだ。

インドネシアの教育NGOと日本を結んだワークショップの様子

なお、このプロセスで、最初は頼りなさすらあった2人の若手社員が大きな成長を遂げたのは言うまでもない。彼女たちとはその後、インドネシアの教育系NGOのゲストを招いたBOPビジネスを創出するためのワークショップも一緒に企画した。そして、このワークショップで生まれた事業プランは、なんと社内のビジネスプランコンテストで優勝して予算が付き、彼女たちは現在、その中心メンバーとしてプロジェクトを推進している。

これはもはや、「企業の社員が僕たちの代わりに営業をしてくれている」というレベルを超越した事例だと思う。留職の導入という結果にとどまらず、たった2人の若手社員が、大企業の中に大きなうねりを起こすという“事件”を起こしてしまったのだ。

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