スタンダールに学ぶ、出版の伝統と変容 「安ければいいというものでもない」というわけでもない??

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スタンダールも「自作自演」していた!?

小説家のスタンダールは、ドン・グルフォット・パペラというイタリア人名義に隠れて、ちゃっかりと自作『赤と黒』について、自分で書評を書いています(もちろん思い切り絶賛しています)。

その中では19世紀前半当時のフランスの出版事情が詳しく描かれていてこれが興味深い。

当時も娯楽小説の市場がしっかりと成立していた。むしろ「女中向け」と呼ばれた娯楽分野のほうが市場規模が大きく、パリでは知られていなくとも地方では有名な作家がたくさんいたといいます。何か、かつてケータイ小説が地方の書店チェーンを中心に売れていた状況を、彷彿させる話です。

判型は、「サロン向け」のハイブラウな小説が現在のA5判くらい。それに対して娯楽小説はB6判となり、これはちょうど現代の青年漫画単行本のサイズに当たります。

娯楽小説は簡素だが、安くて買いやすい判型で出ていた訳ですね。

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