「世界トッププロが相次ぎリオ辞退」の後遺症 スポーツ界でゴルフが孤立するのが心配だ

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片山も歴史の場に「日本男子として名前を残そう」と決断したといい、1997年に亡くなった父の遺品の中に1964年東京五輪で聖火ランナーをした時の委嘱状と写真が見つかったことを明かした上で「震えました。父が『行け』とゴーサインをくれた。これ以上大きな日の丸はない」と決意を述べた。2人ともきちんと五輪と向き合っているなら「早く言ってよ」とも思ったのだが。

ただ、今回の男子トッププロの辞退騒動は、ゴルフ界にとって大きなマイナスイメージになった。世界ランクトップ10のうち1~4位のデー、D・ジョンソン、スピース、マキロイ、8位スコット、10位グレースの6人が辞退。一方女子は全員参加(10位張ハナは韓国5人目で出場できず)と、男女で対照的だった。

ゴルフが2020年東京五輪後も五輪競技として存続するかどうかは、リオ五輪の翌年に検証されて決まる。2020年東京で世界トップが集合してすばらしい戦いをみせて「ゴルフっていいよね」といわれても、後の祭り。存続は今回の辞退騒動で赤に近い黄信号だろう。日本のゴルフ業界に「東京で終わりでしょ」という声、しかも「その方がいい」というニュアンスで聞こえる声があるのには、取材を通して五輪を経験している筆者には違和感がある。日本選手はもとより世界のトップ選手が五輪に積極的だった女子だけでも、東京以降も存続させてもらえないかと、個人的には思ってしまう。

五輪は「アマの大会でプロには合わない」という考えも強く感じた。だが、「プロとアマ」を明確に分けて考えるのは、そもそも「アマチュア規定」が存在するゴルフ界の特殊事情かもしれない。プロとアマが厳格に分かれているゴルフとは違って、他の五輪競技では「プロとアマ」の境目や垣根が、いまやほぼ存在していないのが現状。商業五輪の始まりとされる1984年ロサンゼルス五輪でのカール・ルイスの出現から、以前のようなアマチュアリズムはなくなってきている。

今回も男子陸上短距離のケンブリッジ飛鳥が100メートルで10秒を切ったら所属会社から1億円のボーナスが出るという。プロゴルファーで1億円稼ぐ選手は日本に何人もいない。辞退したスコットはプロの五輪出場自体を疑問視しているというが、「五輪はアマの祭典」と思っているなら30年以上前の考え方で、他のスポーツ界のことをあまりにみていない。

奥歯にものが挟まったような感じ

辞退理由が「ジカ熱」「治安」が主。周りが「そんなの関係ないだろ」とはいえない理由だけに、だれもが奥歯にものが挟まったような感じのまま「個人の判断を尊重する」としている。日本ゴルフジャーナリスト協会のタウンミーティングでお会いした大宅映子さんとも「(男子は)エクスキューズを探しているよう」と話していた。

ジカ熱を理由に直前で辞退したスピースは「五輪は楽しみにしていた。東京には出て楽しみたい」と発言したと報道されたが、自分だけ楽しめれば先のことは関係ないように聞こえるのはうがった見方だろうか。東京でも温暖化でジカ熱が発生したら辞退するのだろうか。薬はあるがジカ熱より怖そうなデング熱はすでに発生している。

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