多くの人は、食品添加物を怖がり過ぎている 「なんとなく嫌」より「正しい知識」を

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そもそも1995年の食品衛生法改正で、国は添加物の概念をより安全側に舵を切り、それまでの「合成」と「天然」から、「安全」と「食経験」に分類を見直した。科学的に安全性を確認した化学的合成添加物をベースに、法改正以降は新たに申請される化合添加物と天然由来添加物も「指定」の範疇に加えた。

申請には数多くの毒性やアレルゲンの試験が求められ、内閣府食品安全委員会が審査をして、一日許容摂取量(ADI:Acceptable Daily Intake)などが決められる。改正の結果、当初489品目だった既存添加物からは、発がん性が認められたアカネ色素など124品目が削除された。

一方、指定添加物のADIは、実験動物に毒性の影響を与えない量(最大無毒性量)に安全係数100分の1をかけて求め、そのADIを十分下回るように基準使用量が設定されている。ADIは毎日一生摂り続けても健康への影響がないと推定される量だ。厚労省が2002年度、指定添加物の甘味料アスパルテームを日本人がどれだけ摂取しているか調査したところ、ADIの0.29%だった。他の添加物についても概ねADIの1%以下で、多いものでも数%にとどまったという。

複合摂取の不安は食品

科学的な裏付けから、本当の「食の安全」を考察すると…

それほどまでに厳格に管理されている食品添加物だが、かつてはこんな事件もあった。1955年に発覚した森永ヒ素ミルク中毒事件では、森永乳業製の粉ミルクに使用された乳質安定剤に、不純物としてヒ素が混入。乳児に重大な健康障害が発生、最終的に死者は130人以上、被害者は1万人を超えた。

この乳質安定剤は、産業廃棄物から再生した第二リン酸ソーダで安全性も確認されていない「毒」であり、現代の食品添加物とは似て非なるものだ。

現代の食品添加物は危険なのか。『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』の著者、安部司さんはアカネ色素など使用禁止になった添加物単品の危険性だけでなく、「複合摂取」を問題視してきた。厚労省が安全性を確認しているのは個別の添加物についてであり、複数の添加物の同時摂取については、実験がされていないから、危険性も食べる我々自身が引き受けるしかない、という主張である。

この主張について、『ほんとうの「食の安全」を考える』などの著書で知られる、薬学博士で国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第三室長の畝山(うねやま)智香子さんはこう説明する。

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