「天皇の生前退位」知っておきたい基本の基本 「なるほど、そういうことか!」Q&Aで解説

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Q1.そもそも「生前退位」とは何ですか?

「生前退位」とは、天皇が退いて天皇でなくなることです。

「現在の天皇制」では、天皇は亡くなるまで天皇の位にあることとされており、生前に退位することは想定されていません。

この規定は、1889(明治22)年の旧皇室典範で決められて以来、変わっていません。戦後に皇室について定めた現在の皇室典範(1947・昭和22年)にも受け継がれています。

Q2. 時代によって、「天皇制」が変わっているのですか?

はい。「天皇」と一言でいっても、時代によって意味合いが違うのです。

天皇を中心に貴族政治が行われた「古代の天皇制」と、武家政権下の「中世の天皇制」では様相が違います。近代以降でも、「明治憲法下の天皇制」と「現在の憲法下の天皇制」ではかなり異なります。

歴史的な時代ごとに意味が変わることを、まず理解しておくことが大切です。

「生前退位」した天皇は何人くらい?

Q3. 明治以前には、「生前退位」は行われていたのですか?

明治以前は、かなり多くの天皇が生前に退位していました。

古い時代でよく知られるのが、女帝で第35代の「皇極(こうぎょく)天皇」です。

もともとは第34代「舒明(じょめい)天皇」の皇后で、中大兄皇子(天智天皇)と大海人皇子(天武天皇)を生み、舒明天皇の死後、即位して天皇となりました(なお「天皇」の号は7世紀の第40代天武天皇の時代に使われるようになったと思われますが、本記事ではそれ以前でも「〇〇天皇」と記載します)。

実は退位した後にもう一度即位して、第37代「斉明(さいめい)天皇」になっています。

Q4. 退位した天皇がもう一度、即位するようなことがあったのですか?

はい。これを「重祚(ちょうそ)」といいます。

奈良時代に2回、例がありました。もう一例は、第46代「孝謙(こうけん)天皇」が重祚して第48代「称徳(しょうとく)天皇」になったものです。

Q5. なぜ「皇極天皇」は生前に退位されたのですか?

大化の改新が始まった「乙巳(いっし)の変」(645年)で、眼前で蘇我入鹿(そがのいるか)が暗殺される惨劇を目にし、それによって自ら退位したとされています。次いで弟の「孝徳(こうとく)天皇」が即位しました。

Q6. その後、どれくらいの天皇が、生前退位されているのですか?

その後の歴代天皇の中で、約60人が生前に退位しています。自ら退位した天皇ばかりではなく、政争に巻き込まれて退位させられた天皇もいました。

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